幕間

「どうだ?」

 ほとんど何も無い部屋で男が紙コップのコーヒーを二つ持って入り、一つを室内の男に渡す。

 コンクリートの上に直に座った男はコーヒーを受け取り、床に散らばった写真を指す。

「監視カメラにはちらほら写ってるんすけどね。町で見張ってる奴らからの目撃情報はゼロです。これじゃ『機械に頼ってばっかりで、足を動かしてないだろ』と言われても文句は言えませんや」

「ああ、それだがな。見失ったモンは仕方ないからそのまま報告したんだが、特にお咎めなしだ」

「ほう。そりゃ、どんな手を使ったんで?」

「『始めからあなた達に追いかけられると思ってない。金は出すから機械を使え』とさ」

「ほほう」

 男はお高いお嬢さんに「どうやって思い知らせてやろうか」と考えるのを楽しむように、笑いながら写真を手に取る。

 写真には少年くらいの男と、ふわふわの耳当てをした少女が写っている。

「しっかし、家出少女なんですかね? あのお嬢さんの身内かなんか? 随分大仰なこって」

「詮索しないのがモットーだからな。今は家なしを探すのもそんなに苦労しないはずなんだがなぁ……。家なし……だったよな? この子」

「ええ、……だったと思いますよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る