第17話 初体験

「じゃ、お風呂入ろうか? 」

「えっ? 」

「お湯溢れてるし……。それに、お互いに入ってるとこ見られる方が恥ずかしくない? なら、一緒の方がいいかなって」


 確かに一理ある。

 あるけど、お風呂に入らないで、お弁当だけ食べて出ていくって選択肢もあるわけで……。


「別に、先にしおりん入ってもいいよ。でも、ここでガン見するけどね。どっちがいい? 」

「お風呂に入らないってのは? 」

「いいけど、しおりんの汗の味も美味しそうだね。」


 耀がペロリと汐里の首筋を舐めた。

 そのまま覆い被さるようにベッドに倒され、ヤル気満々のキスをされる。

 耀の手が、初めて汐里の小さな胸に触れた時、汐里はギブアップした。


「お風呂入ろう」

「一緒に? 」


 汐里はうなずいた。

 まだ真夏ではないとはいえ、それなりに汗もかいている。

 このままことに至るのは恥ずかしい。


 耀はベッドから起き上がると、汐里の手を引いて脱衣所に使った。


「あのさ、脱ぐ時はあっち向いてて」


 お互いに背中合わせで洋服を脱ぎ、汐里はバスタオルを、耀はタオルをまいて風呂場に入る。


「これ、とるよ。身体、洗ってあげる」


 お互いにタオルをとり、向かい合ったが、汐里は恥ずかしすぎて耀を直視できない。耀は逆に汐里から目を離せないでいた。


「凄い、綺麗だ……」


 耀の手が汐里の胸に触れ、汐里は恥ずかしさに震えた。


「胸、コンプレックスなの。小さいから。だからあまり見ないで」

「やだ。いっぱい見たいし、いっぱい触りたい」


 耀はボディソープを泡立てると、素手で丁寧に汐里の身体を洗った。汐里も同じようにして耀を洗う。

 湯船に浸かり、耀は汐里を後ろからバグした。


「ヤバい!幸せ過ぎる……」

「どうしたの? 」


 汐里の頭に頬をグリグリさせながら、耀は好きな女性と裸で抱き合うことの幸福感に浸っていた。

 それと同時に、早くこの可愛らしい生き物を自分のものにしたい欲求に駆られる。


「ベッド行きたい!……いい? 」


 汐里がうなずくと、身体を拭くのもそこそこに、汐里をベッドに押し倒した。

 焦る気持ちからか、汐里を触る手に力が入る。


「耀君……少し痛い」

「ごめん! 」


 耀はどんな力で触ればいいのか試行錯誤しながら、汐里の反応を見つつ手を進めた。


 ★★★


「幻滅した……? 」

「何が? 」

「うまくできなかったし……」


 汐里は、耀の頭を抱えるように抱きしめると、その頭にキスをした。

 汐里もそんなに経験人数が多い訳じゃないし、はっきり言って久しぶり過ぎてセカンドバージンと言ってもおかしくはなかったが、耀は全くもっての初体験だったらしい。コンドームを自力でつけられなくて発覚したのだ。

 耀の年齢ではそういう男の子もいるだろうとは思ったが、耀のようにモテるタイプの男の子が……というのは、本当に意外だった。


「嬉しい。耀君って、遊んでるように見えたから、気軽にできちゃう人なのかと思ってたし」

「いや、好きじゃなきゃしないでしょ? 」

「でも、彼女いたんだよね? しなかったんだ」

「そうなる前に別れちゃってたから」


 それは美麗のせいと言えなくもない。


「もっと頑張って、次はリードされないでできるようにするから」

「一緒に頑張ろうね」


 初めて汐里から耀にキスをすると、耀はギューッと汐里を抱きしめた。


 一時間延長してラブホテルを出た時には、辺りは真っ暗になっていた。耀に肩を抱かれた汐里は、なんともいえない幸福感に満たされていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る