第22話 疑惑の写真

「耀、ねえ、夏合宿の買い出し終わったら、みんなでお茶するでしょ? 」

「少しならね 」


 午前中はサークルの集まりがあり、みなでボーリングを楽しみ、合宿の打ち合わせなどをした。

 昼ご飯を食べて解散になったのだが、耀と一年の女友達三人と、合宿に持って行く花火の買い出しを頼まれていたため、ドンキホーテで花火選びをしている最中だ。


 女友達の中には、佐々木雫もいた。


 雫はいつも通り耀の腕に腕を絡めてくる。

 耀は、その腕を手で押さえた。


「あのさ、あんまりベタベタするの止めようよ。一応俺は男友達な訳だしさ、雫の彼氏とかにしたら気持ちいいもんじゃないんじゃない? 」

「やっだあ、今さら何言ってんのよ? 耀っぽくな~い」

「いやさ、今まで気にしすぎな過ぎたよなって思って」

「彼氏なんていないし、耀だって知ってるじゃん? 」

「ほら、雫のこと気になってる先輩とかもいるしさ、気にした方がいいって。誤解されるかもしれないじゃん? 」


 雫は、耀の言葉など気にせず、身体を押し付けるように腕を組んでくる。


「いまさら? 別に誤解されてもかまわないし。ほら、みんな待ってるから行こうよ」


 彼女がいるのは内緒だと汐里に言われているから、自分に彼女ができたから……とは言えないし、どうすればくっつかないように言えるんだろう?


 強く拒めない耀は、お会計の列に並んでいる女友達のとこに引っ張られて行く。

 雫のスマホが鳴り、スマホを見た雫が、見て見てとみんなに画面を見せた。


「ウケる! 学生課の事務員のデート写真だって。友達が偶然見かけたとかで送ってきた」

「ああ、あの地味目な? ウワッ、相手も地味だね。」

「ってか、あんたの友達も大概暇だね」

「そう言えば、耀もこの人と喋ってたよね? 知り合い? 」


 耀の目の前に、汐里と男が談笑している写真が見せつけられる。

 他にも、男が汐里の頭を撫でているものや、手を握っているものなど……。


 耀の笑顔が固まる。


 叔母さんに会いに行くって聞いていたのに、なんで男と?

 しかも、なんだって雫のスマホにその写真が?


「ごめん、ちょっとトイレ」


 耀はレジの列から離れると、トイレの方へ向かいながらスマホを出した。


 耀:しおりん、今何してるの?


 ラインをうつと、すぐに汐里の既読がつき返信がくる。


 汐里:新宿にいるよ。お昼食べてる。

 耀:一人? 叔母さんは?

 汐里:一人だよ。


 一人って、俺に嘘ついた?!


 耀の眉が一ミリ寄る。

 珍しく険しい表情になりつつ、さっき見た写真のことについて聞こうかとラインを眺めていたら、汐里からラインの続きが届いた。


 汐里:実はね、叔母さんに呼ばれて今日牧田さんに会ったの。謝罪したいって、謝ってくれたよ。

 耀:牧田さんって?

 汐里:ほら、前にお見合いしたじゃん。お詫びにって、ホテルのプールの招待券もらったから行こうね。


 牧田って、あのヤバめの?

 なんだって、あんなのと会ってるわけ?

 っていうか、さっきの写真見合い相手なわけ?ずいぶん違うふうに見えるけど……。


 言いたいことはいっぱいあるけど、小さい男に思われそうで、細かいことを聞くことができない。


 耀:俺も新宿。今、買い出し最中だから、ちょっと待ってて。抜け出すから。

 汐里:じゃあ、西武新宿線の北口すぐのドトールにいるよ。来たらラインちょうだい。出ていくから。

 耀:了解。待ってて。


 耀は、雫達の所に戻ると、用事ができたから帰ると言い、大ブーイングをうけた。


「お茶するって言ったじゃん! 」

「そうだよ。今、みんなでカラオケも行こうって話してたんだよ。耀がいなきゃつまんないし」

「カラオケ行こうよ」

「拉致ろう! 」

「だね」


 耀は女友達三人に囲まれ、無理やりカラオケボックスに引っ張られて行く。


「マジで用事できたんだって。人待たせてるから、本当に帰して」

「じゃあ、三十分! そしたら帰っていいよ」

「……三十分ね」


 耀は渋々うなずくと、カラオケボックスに入って行った。

 どうにも人に厳しく言えない耀だった。

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