「し」

白雪に染みつく疾視の視線。執念の紫煙、湿っぽくしがみつく。

親愛なる師の死、偲ぶれど、心痛は潮を引かず、忍び泣き。

知らぬふりした忍び笑い。

憔悴しきった心情知らず、死屍累々の肢体は視界から消えない。

終曲だ。終局だ。

シンフォニーは深淵を凌ぐ。白銀のシュプールは終末に沈む。

霜枯れはシンシンと春寒に染みる。

鹿は詩歌を慕う。秋嵐を知らせる。

東雲に顔をしかめる。静かに詩を歌う。

死んだ師の死体は、深淵に沈んだ。

シオンの花嫁、幸せに。

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八月の雪と満員電車 井澤文明 @neko_ramen

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