好き嫌い

嫌いな人参やレタス、プチトマトが皿の上に並ぶ。


イヤだ、厭だ。気に入らない。


「好きなものだと思って食べなさい」


母は言う。


好きなもの。ハンバーグ、ステーキ、苺パフェ......。考えだしたらきりがない。


そうだ、そうだ。一番好きなものにしよう。


そう、あの子だ。あの子だ。隣のクラスの女の子。


人参は彼女のセクシーな手足と躯。


レタスは彼女の輝かしい髪としよう。


プチトマトは、彼女の愛らしい瞳だ。


その途端


大嫌いな野菜達が、好きになってしまった。


一番は勿論彼女だが。


「いただきます」


いつか、彼女を食べる日が来る事を楽しみにしよう。


これから毎年、七夕の日、短冊に書く事としよう。


君への愛の言葉を。愛の願いを。




皿の上に残った輝く水滴は、彼女の涙と血だという事に、僕は気付かない。

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