「い」
言えなかった愛しい子への言葉、言えたならば、慈しめたなら。
言われのない偽りの逸話でさえ、
幾千もの命の一切をかなぐり捨てて、
異郷の池で苛立ちをいだく。
いかなることでさえ、一瞬にして岩肌にいだかれる。
いつだったか、嫌だと泣いて怒りをいだいた愛し子は、わたしに否応を言わせないで、幾多の時を超え、命の意味を探していなくなった。
無花果が意図もなく糸に雁字搦め。
言えたらいいな、いっぱいの嫌味、いなくなった愛し子に。
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