詩と死、また来て四角。

 今日も誰かが死ぬ。

「左様なら、左様なら」と云いながら。

 しかしその人が死んだ事は、世界中のみんなは知らない。知られないまま、死人は忘れられて行く。テレビに名前は流れないので、誰の心にも残らない。

「さよなら三角。さよならバイバイバイ。もう逢う事はないでしょうバイバイ」

 僕は涙を流しながら、夜空に呟いてみる。今日亡くなった命の冥福を祈る。逢った事のない人々の死を悔やみ、今日も眠れずにいる。

 そんな人になれたら良いだろうな。考えてみる。とても優しくて、他人が哀しいときも、一緒に哀しめる。そんな人に。でも僕がそんな人なら、僕は今人気者だろう。みんなに慕われて、尊敬される様なすごい人になっている。そう思うと、眉間にしわが寄る。僕がそんな人になれる希望がない。他人からの評価で、僕はきっと自惚れてしまう。そして偽善者になる。醜い偽善者に。

 そんなとき、お父さんは語りかけてくれる。

「世界中の人達に知られていなくても、誰かを救う事が出来たのなら、それで良いんだよ」

 今日死んで行った人達は、テレビに名前が流れないだろうが、きっと誰かを楽しませたり、助けた事があるはずだ。周りからの評価を気にせずに、誰かを助ける事が出来る。僕の望んでいるヒーローだ。

 今日も死んでいったヒーロー達の事を思いながら、僕達は生きて行く。ヒーロになれるかな、と希望を持ちながら。

 今日も誰かが産声を上げる。

「こんにちは、こんにちは」と云いながら。

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