概要
「吠声(はいせい)」という声で魔を祓い、王権を守護する任務などに就くためヤマトへとやってきた阿多のカザトは、得意の格闘術を通して様々な人々と触れ合い、心を通わせてゆく。
だがやがて大隅半島の隼人たちとヤマトとの間に全面戦争が勃発。カザトは好敵手である大隅のヒギトと戦場でまみえることとなる。
友への思い、愛すべき人への思いを胸に、カザトは運命とどう向き合うのか―。
史実、「隼人の乱」をテーマとした長編古代ロマン。
第15回「歴史浪漫文学賞」、3次選考通過作品
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おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!風を呼び起こす静謐な情熱と、身体を駆け抜ける空気の鼓動
間や息遣い、耳に響く音。
ただぶつかり合うからこそ生命が輝いて見える素敵な作品でした。
こちらは『生きた人間』の闘いのシーンを描くためのバイブルです。
三つ、特に素敵だと感じたシーンを紹介します。
◉竹割り(過去・現在)
何気なく挿入されているシーンながら、作品を読み進めるうちに「竹割りを通して、身体の使い方や自分との向き合い方の基本を教えてくれたのは父だったのか」と感じました。
不器用で人一倍習得に時間のかかった主人公と父のやり取りをじっと目に焼き付けて、その先を読み進めて欲しいと思います。
◉彫刻
暇つぶしに装備品に粋な計らいをするシーン。
ふとした闘いの合間に挿入するエピソードと…続きを読む - ★★★ Excellent!!!古代日本を舞台にした、「その時」を精一杯生き抜いていった人々の物語
舞台は奈良時代、ヤマトとよばれる古の日本。
作者が研究課題にしていた史実をテーマにしたというだけあって、当時の景色、時代が色濃く描きだされています。
個人の思いではままならない政治のうねりの中に、流され、もまれながらも精一杯生きる人々。人が人と出会う時、友情が生まれ、愛情が生まれ、また、葛藤が生まれ・・・熱いドラマが生まれます。
肌と肌とでぶつかる格闘技を通して、心を通わせていく描写がまたすばらしい。登場人物一人一人の想いが伝わってくるとき、心がゆさぶられずにおれません。
人々の強さと優しさと潔さとが息づく古代歴史ロマンをあなたも味わってみませんか?
おすすめです。 - ★★★ Excellent!!!その手に情と愛とを握り込み、男は戦いの場へ立った
奈良時代の南九州に住まう土着民族「隼人」。
ヤマトに帰順した彼らのひとりである阿多のカザトは、同じ隼人の別部族であり共に帰順していた大隅の反乱を制圧する軍の使者として選ばれた。そして戦いの中、彼は好敵手であったヒギトとまみえ、習い修めた格闘技で勝負をすることとなる。
なによりもまず読み応え!
隼人という存在を透かして映しだされた当時の日本の有り様は、政治的にも土地的にも色濃い問題をはらんでいることが窺えて実に興味深いですし、それだけでも物語として十二分に成立してます。
が、その渦中へカザトさんが投じられることで、物語がドラマに昇華するんです。
立場的には忌まれる異民族。でもその確かな…続きを読む