24 なぜなら世界を再生させるためだから

「うゎっ、なに? これ。気持ち悪ぅ」

 いよいよ大詰めってわけね。

 あまりアクションゲームがうまくないボクでも、胡桃名さんやエースさんの戦いぶりを見てスキルアップしたんだから。

 学習ってヤツ?

 ひとりでプレイしていたら、ここまで来れなかったかもね。

 でも今はこいつを倒して真のエンディングを取り戻す。

 生きるために!

 そしたら何か変わるかな?


「最後だ……ぼくをエネルギー弾として怪物に撃ち込むんだ」

 ヒューポーが僕らを見て言った。

「そんなことしたら、ヒューポーが……」

「大丈夫! ぼくたちはいつも一緒だ!」

 ヒューポーの眼差しが、強い決意で僕たちを射抜いた。

「ヒューポー……わかった!」

 悪夢が大きな口を開けてピートとエースに襲いかかって行く。


 そこで届いた胡桃名さんからのメッセージ。

『最後のショットは君が撃て』

 ボクの目の前に悪夢の怪物の背中の大きな眼があった。

 ボクは反射的にボタンを押した。


「行っけえ――!」

 ショットを放つと、エネルギー弾となったヒューポーが悪夢の怪物の背中の眼へと飛び込んで行った。

 眼に直撃した反動で瞼を強く閉じ、ヒューポーもろとも取り込んでしまった。

 次の瞬間、悪夢の体中から、白い光の筋が次々と刀のように突き出してきた。

 その勢いは加速度的に増していき、体中が光の筋となった時、大爆発を起こした。

 僕たちは爆風に吹き飛ばされまいと必死に耐え、ようやく風が収まり、目を向けると、そこには歌姫レブリスが生まれたばかりの赤子のように小さくうずくまって浮いていた。

 レブリスは静かに瞼を開くと言った。

「……ありがとう。悪夢はすべて消え去りました」

 よかった。レブリスが助かってよかった。

 でも――。

 でも、ヒューポーは?

 ヒューポーはどこなの?

「ヒューポー……いつも一緒だって……そう言ったじゃないか!」

 そう叫ぶ僕の声はどこまでも続く深い闇夜の空にむなしく木霊した。

 するとどこかで風がひゅうと鳴いたんだ。

 弱々しく木の葉舞うような風が……いや、あれは風じゃない。

 あれは声だ。

 確かに誰かの声だ。

 しかもその声は僕を呼んでいる。

「一緒だよ……」

 顔を起こすとそこには体中が傷だらけになったヒューポーが浮かんでいた。

「ヒューポーッ!」

 よろよろと羽ばたきながら近付いてくるヒューポーに僕は必死に手を伸ばした。

 後少しという所で、ヒューポーががくんと力尽き、落下した。

 しかしすんでのところで僕の手がヒューポーの腕を掴んでいた。

「大丈夫だよ、僕が……僕が絶対離さないから」


 ボクはシンディとヒューポーの姿を見て、羨ましいと思った。

 ボクは誰かを真剣に守ろうとしたことがあったのかな?

 ボクには自分を犠牲にしてでも守りたい人がいるのかな?

 自分がどうしたいか、どうされたいかしか考えてこなかったんじゃないのかな?

 人がどうしたいか、どうされたいかを考えたことがなかったんじゃないかな?

 そんなことが頭の中をぐるぐるぐるぐる回ってる。

 でも、これってもしかしたら前に進むってことなのかもしれない。

 ボクは今までいろいろな言い訳をして肝心なことから逃げていたよね。

 今なら生きる勇気が出せるかもしれない。

 なぜなら世界を再生させるためだから。

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