14 そうしてクルクル回り出したんだ

 昨日の夕方からつい夢中になってずっと夜通し『シャトファン』をプレイしてしまった。

 もう昼過ぎ頃かな?

 ゲームはかなり佳境に差し掛かっているって感じだ。

 ボクがその部屋で鏡に向かってAボタンを押すと画面にメッセージが表示される。


 ここは写し鏡の間です。

 ここでは世界中にいるプレイヤーの中からひとりと組んで一緒に戦うことができます。

 組んだプレイヤーをバディと呼びます。


 続けて選択肢が表示される。


   ▼バディ申請をする

    バディを確認する


 世界中のプレイヤーからひとり、というのが究極の選択のようで緊張する。

 ツイッターやフェイスブックだったらいくらでも友達になれるから、よく考えずに簡単に承認しちゃうけど、ひとりとなると考えちゃう。

 それってある意味運命の出逢いだよね。

 どうしよう。

 うーん。

 って考えてたら突然ウインドウが開いてメッセージが表示された。


 バディ申請が届いています

   ▼いますぐ確認する

    後で確認する


 え? 誰?

 ボクのキャラネームを見て、そのただ一人の運命の選択をした人がいるってことだよね。

 何で、何で?

 《いますぐ確認する》を選ぶと画面に相手のプロフィールが表示された。


 なまえ:ピート

 性別:男性

 好きな色:むらさき


 ピートって誰だろう。

 田畑たけし?

 いや、あいつのあだ名は『ビート』だな。

 シンディって名前を見て申請してきたってことは学校の誰かなのかな。

 ボクのことシンディって呼ぶのはウチのクラスの奴だけだから、クラスの男子の誰かかな。

 まてよ、性別を男性って登録してるからって、本当に男子かどうか怪しいもんだよね。

 なりすましてるかも知れないわけだし。

 すると女子ってこともあるか。

 まさか……。

 まさかハルカじゃないだろうね。

 ハルカってゲーム機持ってたっけ。

 あ、高杉彩香が持ってるのを取り上げてた気がする。

 そうだ、やってたよ、ゲーム。

 何かキャンディ集めるゲーム。

 そういえばよく紫のリボン付けてなかったっけ。

 紫好きなんじゃん?

 ゲームの中でもボクをいたぶろうって?

 ふん、そうはいかないね。

 ゲームの中だったら一対一なんだから、逆にやり込めることだってできるじゃん。

 気付かない振りしてバディになって、ゲームの中で仕返ししてやろうか。

 それにしても『ピート』って何だろう。


 バディ申請を承認しますか?

     ▼は い

      いいえ

 

 いろいろ考えてたら、承認画面になっちゃった。

 まぁ、一旦承認しても、後で解消できないはずはないし、ここは承認でいいか。

 《はい》を選んで決定ボタンを押すと、通信中のアイコンがクルクル回り出した。

  ボクの運命も、そうしてクルクル回り出したんだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る