本編3万PV記念、2ギルド受付嬢の裏話1

ex2−1 ギルド受付嬢の試練

 受付嬢というのは、どの業種でも能力と容姿を併せ持つ者にしか任される事のない花形で。そこに配属されるとなると、私としては緊張してしまう訳でして。いつも堂々ハキハキと仕事を熟している先輩方は、言うまでも無く尊敬の対象です。

 私自信としては書類とにらめっこしていたり、ホールの掃除を任されている方がお似合いだと思うのですが、他の皆さんを差し置いて任された以上、辞退するというのも後が恐かったり。

 なので、毎日ギルドに入る前に深呼吸をして、気合いバッチリで仕事に挑みます。


 私以外はエリート集団のギルド受付嬢なのですが、その中にも一人前と半人前の基準がありまして。例えばそれは、『登録を担当した冒険者——そのまま縮めて担当冒険者と言います——が、ランク1や2で満足せず、3か4、できれば5くらいになる様励まし、支える事』があったりします。

 ランクというのはつまり実力と実績、信頼の評価ですから、冒険者を如何に導くかが私達の腕の見せ所とされている訳です。

 それは例えば実力に見合った活動を提案する事であったり、それは例えば愚痴や相談に乗る事であったり、それは例えばパーティメンバーの斡旋であったり、それは例えば情報収集のお手伝いであったりと、幅広く柔軟な対応が必要なので……ギルドに所属して日の浅い私には、荷の重い仕事です。


「冒険者登録をしたいんですが」

 余り目立たない印象の男の子がそういってカウンターにやって来たのは、他の受付嬢の人達が席を外している時でした。

 率直に言って、変な人です。まず、武器防具を装備していませんでした。身長の割に細身で、腕も畑仕事をした事さえなさそうな様子です。戦闘に身を置くなんて、生まれてこのかた考えた事もない……と言われても不思議には思わなかったでしょう。

 それに何より、冒険者になりたいと言い出す時期がおかしいです。冬直前に家を追い出されるなんて事は滅多にないでしょうから、この手の手続きは新年の儀の直後や、種蒔きの時期が終わった頃がシーズンです。これから収穫という人手が必要になる今、冒険者を目指して家を出るなんて……この辺りは不作に見舞われた農家もない筈ですし。

 訝しく思いながらも左右を見渡して、他に誰も受付員がいない事に私は愕然としました。私には無理です。まだ早いですって。

 助けて下さいとお願いしておいた先輩の皆さんは、何故か揃って姿が見えません。

 目の前の男の子に気付かれない様に、深呼吸。私だって、他の女性職員を差し置いて選ばれたエリートなんです。……一応は。と自己催眠。

「登録、ですか」

 男の子は、冒険者ギルドでは余り見ないタイプの人でした。

 改めて確認してもどう見ても腕っ節に自信がある様には見えませんし、身綺麗にしている様なので忠実まめな方という印象を受けます。仕事の倍以上休みたいという考えの方ではないでしょう。衣服から察するに余り金銭的に裕福ではないのでしょうけど、一攫千金を目指して、といった風でもありません。

 どちらかと言うと、カウンターのこちら側で仕事をしている様な印象があります。巡り合わせの問題もあるのでしょうけれど……。

「ええっと。武器防具はお持ちですか?」

 いつまでもじろじろと見ていても失礼なので、必要事項の確認をします。

「最低限は支給品があると聞いたんですが」

 いったい誰に言われたんでしょうか。最低限というのは本当に最低限の間に合わせで、支給品というのは普通、自前で装備を用意した上で足りない部分を補う為に利用するものです。

「……では、特技などは……?」

 一応確認はしますが、剣術や槍術が得意というのであれば、武器の1本くらい持っている筈です。

「暗算が正確で速い、と褒められた事なら」

 ……そんな事は聞いてないです。

 私はこの時点で、この人が冒険者としてやっていける未来が、それを支えていく自分の未来が見えませんでした。


 それでも、登録拒否は出来ません。

 一応、冒険者証を発行手続きを進めて、現在の才能などの確認と、減痛幻惑魔法の付与の為、教会へ行く事になりました。

「いやー、緊張しますねぇ」

 緊張してる人は、そんな暢気のんきな事は言えないと思います。


 ◇◆◇


 変な人です。

 幸運の女神の加護があるのに、何で私が担当官なんでしょう。

 凡庸で影が薄いってそれ資質なんですか。

 隠密と危機感知の才能は鍛えれば活動に役立つかも知れませんが、使い物になるまでにどれだけ寿命をすり減らすつもりですか。

「危ないですよ、辞めておいた方がいいですよ?」

 せめて逃走の才能でもあるなら、あるいは才能だけでも武器や盾の扱いを期待できるなら、私もここまで反対しませんけど。幾ら冒険者が死にながら仕事を覚えるものと言ったって、限度がありますって。身体能力にも才能にも期待できないって、それただの自殺志願じゃないですか。私じゃなくても止めますよ。

 斥候役に専念するにしたって、仲間を見つけてから始めるべきですって。


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 3万PV記念!

 とか思いつつ、これ公開する頃5万PV超えてたりするんでしょうか。

 5万PVや★100記念なんかもやっていきたいとは思っているのですが、どんな順番でサイドストーリーを公開していくかは未定です。

 とりあえず、付き合いの古い順に今回はギルド受付嬢に登場して頂きました。

 メインストーリーでは割とちょい役な彼女達受付嬢ですが、日々冒険者のため奮闘しているのです。

p.s.

 公開する前に本編★100になってしまいました。ありがとうございます。

 出会った順番で行くと、次は魔法使いリリーのサイドストーリーでしょうか。それとも……

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