ex6−2 獣耳少女の推察
私達が金策チームに合流したのは、
少なくとも私達には思いつかなかったし、そうそう都合よく教えてくれる人なんているはずもない。その点、彼はいったいどんな目的で私たちに接触して来たのか。中々に疑問は尽きないのだけど。兎に角、みんなに不安を与えない様、私は笑顔で振る舞った。
7人というのは中々に大所帯で、一塊でいるだけでも場所を選ぶ。
だから、食事をする訳でもないのに長々と酒場のテーブルを占拠している訳にも行かず、私達はギルドの会議室を利用して今後の方針を相談する事になった。
「さて、皆にもそれぞれどうしたいか、軽く考えて来てくれと言っておいた訳だけど」
リーダーのそんな言葉から、久しぶりに真剣な調子で会議は始まった。
「戦闘訓練を重視する」「装備を整える為に金策に傾倒する」「護衛依頼などに混ざって経験を積みながら技を盗む」……。上げられる案は、どれも冒険者としての今後を見据えた物で、「引退を視野に技能を身につけたい」とか、「腰を落ち着ける場所を探しに行きたい」なんて意見はない。
ちょっと意外だけど、私には嬉しい事だった。
「——なるほど、総じて資金稼ぎ及び戦闘技能向上を測りたいというところか」
自然、以前全滅を
皆の視線を受けて、彼女は恥ずかしそうに小さくなっていた。
魔法使いさんは咄嗟の反応が遅れる、という点さえ除けば凄かった。何が凄いって、全部凄い。
彼女がいると飲み水確保の必要が殆ど無くなるし、中型複数と遭遇して今までなら撤退を選ぶ所でも一瞬で2匹とも足止めしてくれる。彼女が本気を出したら、中型くらいじゃ戦闘にもならない。地面の上は全て彼女の罠と言っても良いくらい、
「最近教わったんだけどね」
なんて彼女は謙遜するけど、彼女がいるだけでパーティの戦力が倍増した様な具合だ。
臨時加入する際に、「結構役に立つ」なんて言っていたけど、それは自意識過剰とか誇張表現とかではない事は、合流1日でよく分かった。気を抜くと彼女に頼りっきりになってしまう様な誘惑に駆られる程に、彼女は有能だった。
悪い、とは思いつつ。それでも、とも思ってしまう。そんな誘惑。
「だからこそ、我々は強くならなければならない」
なんて、リーダーが言わなければ、その誘惑に負けていたかも知れない。
1人のメンバーに頼りきりになるなんて、パーティとして不健全だ。
彼女が疲労で倒れでもした瞬間瓦解する戦術なんて、有って無いのと同じだ。
本当に、リーダーは芯の強い人だと感心した。
支え合う事。それがパーティの本質で、依存関係であってはならない。
小休憩で、緩みかけていた心を引き戻してくれる。
きっと、彼女が前を向いているから、私達は進もうとしているんだ。
◇◆◇
パーティとしての活動が休みの日は、私は力仕事の日雇い依頼を受ける。
パーティでの稼ぎはある程度装備に回さなければいけないから、お金が必要な私は欠かさず1人で可能な仕事を受けていた。
「今日も?」
「うん、ちょっとね〜」
斥候の子の問いかけに応えて、宿を出る。
フラフラしてる子って思われてるかも知れないけど、それくらいは仕方ない。
ただ、気になる事がある。
ギルドであったり、実際に働きにいった先であったり、以前見かけた少年を度々見かける様になった事だ。
多分、これまで私が気に留めてなかっただけなんだろうけど。
それだけ活動的なのに、支給品と同質かそれと同程度の質の低い装備。鎧下や肌当ては少し上等みたいで、全体的に良く手入れされてる。
全体的に見て、凄くアンバランスだ。
装備の具合から見て取れるマメさや仕事の頻度から見て、装備の質が低すぎる。もちろん彼の事情なんて知らないから、何か散財癖を持っているとか、借金を抱えているとか、そんな事情があるのかも知れない。
もし私と同じ様な境遇にあるとしたら。効率の悪すぎる私達のやり方が目に余り、口出ししたくなったんだろうか。
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