ex5−3 田舎娘の不安
「あら? 確かに私は彼を雇っているけど。……貴方達とは対等な関係を結びたいと考えているわ」
魔法使いさんは、ちょこっとだけ意外そうな顔をしてみせた後、あっさりとパーティに入りたいんだと認めた。
ウチにはそいだけで十分過ぎるくらい驚きだったんやけど、リーダーさんは更に確認の言葉ば続ける。
「彼、とは? 我々が男性冒険者を排他していないとわざわざ確認したんだ。無関係ではないと思うが」
そん言葉に、今度は魔法使いさんが驚いちょる。
「これは失言だったわ。別に、騙すつもりがある訳ではないのだけれど。……彼、というのは私が最近よくお世話になってる冒険者よ。斥候が得意な、ね」
斥候が得意。そんな知り合いは隣に座るちんまい子しか知らんから、ついウチはそちらを見てしまう。その表情が読めんのは、いつものこったい。ただなんともなく、驚いてるんかなとは思うた。
「雇っている、と聞こえたが。冒険者的な雇用関係なら、貴女がパーティの加入を決める際その人物に配慮する必要はあるまい」
「……恩人、よ。ちょっと変わってるけどね?」
口ぶりに似合わん、難しげな顔をする魔法使いさん。
「腕は確かなのよ。でも、職業病って言うのかしら? 人間不信を拗らせちゃってるみたいで」
そげな人と、ウチば仲よう出来る気せんのじゃけんど。
ちらりとウチを見た魔法使いさんは、
「本質的には、悪い人ではないはず……なのよ。すくなくとも、私達みたいな人種にとっては」
「それは……興味深いな」
リーダーさんは、そん言葉に感じるもんがあったらしい。
「彼は他の男性冒険者みたいに感情だけで私の言葉に反発したりなんかしないし、安定・安全重視の方針も同じ。このパーティの話を聞いた時は、悪く無いかなって思ったんだけど……まぁ、私の言葉を信じて貰うにも時間が掛かるでしょうし、貴女達は立て直しの時間が必要そうだし。どう? 臨時で私をパーティに置いてみない? 自分で言うのもなんだけど、便利よ。私」
調べられとるんや思うと、ちょこっと怖か。……そいな魔法使いさんが言う、人間不信な斥候専門の男性冒険者さんはもっと怖か。
ちゃけど、そんな事で状況判断しとったら出来る事も出来んけん。ウチはリーダーさんの考えば従うたい。
◇◆◇
方針は変わらず、情報収集と金策。
1日の収入が目に見えて増える程、魔法使いさんは優秀たい。
その点、ウチは何が出来とるんちゃろか。
こん調子で装備ば揃うたら、ウチは何したらええと?
そこらの
魔法の所為でインナーで肌を隠せんけん、恥ずかしいんば我慢せんなんけど。森ん中ならまず問題なか? なかちゃね?
したら、ウチは
あんじょう防具はすぐ揃うて、傍目から舐められん程度の格好はすぐに出来よる。
嫌らしい視線も混ざるばってん、背に腹は代えれんたい。
お金いうんはほんに大事ね。
ウチはもう要らんのけ?
「あんた、護衛だろう。緩み過ぎだ」
端から投げられた言葉ば、ウチゃ飛び上がった。
声のした方さ向くと、気付かん間に頼りない感じん男がおる。
「待て待て、武器で威圧するのは無しだ。
うっかり身構えかけたウチを手振りで制して、気ぃ抜けた声で彼は言いよる。
ウチは警戒はそのままに、武器に伸ばし掛けた手を降ろした。
「よしよし。そんな事よりだ。護衛なら護衛らしくもっとどっしりしてろ。目を光らせてる奴がいるってだけで、手出しし難いもんなんだよ。後、あの2人、目に毒だからマントでも羽織る様に伝えてくれ。自分からトラブル呼び込んでちゃ世話がないだろう」
言いたいだけ言いよって、彼は資料室を出て行った。ウチが返事ぃ考える暇もない程、呆気のう。
ずっこい人たい。
そんでも、言いたい事は判る。
護衛のウチが端様から見て頼んないんは護衛失格なんも。
やっぱ、露出多い格好がトラブル呼ぶっち言うんも。
まずはひとつひとつ、出来る事からするしか無かね。
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