第24回 旋風のカガリ
今回、ご紹介するのは『旋風のカガリ』。作者は、『無責任艦長タイラー』シリーズの吉岡平先生です。
現実世界でいえば、大和時代末期から飛鳥時代ほどの文明レベルの世界。サキホの国の王、ヤガシラは多くの皇子を手駒に使い、周辺諸国を侵略していました。隣接するヤイソの国との戦争で、わずかな手勢を率いて戦うのが、主人公のカガリ。ヤガシラの子の一人ではありましたが、母親の身分が低かったがために、一族から冷遇される皇子です。ヤイソの国の皇女ナナキの強さに圧され、ヤガシラは他国を攻めるために一時的にヤイソとの和睦を決断。そんな中、次の王位継承を巡って、皇子達の間で静かな争いが進められていました。
本作を一言で表すなら、「お家騒動」。皇子達は仲の良い者達、反目し合う者達、見下される者達、と様々。特に、主人公のカガリに対する扱いは低いものでした。カガリは自分の立場を弁え、野心などありません。一族のため、兄の一人であるトヨヒミズ(剣の達人であり、王や他の皇子達からも一目置かれる男)の指導のもとで、剣の腕を磨きながら戦場へ出る毎日。ですが、カガリの意思などお構いなしに、王位継承の争いが激化していくのでした。
お家騒動といえば、『タイラー』シリーズにおいても、後継者のため激しいお家騒動が繰り広げられていました(正確には、シリーズ内で最も未来のお話である『無責任三国志』ですね)。あちらはSF作品ですが。本作では、そのときの経験を活かし、吉岡先生は和風作品で新たな戦いを表現なさっています。ラノベで和風というと、ヒットさせるのがなかなか難しいとされるジャンル。しかも、人気の戦国時代や幕末ではなく、大和~飛鳥時代を下敷きとしたオリジナルの作品。かなりの冒険であるといえるでしょう。
白河は3巻が発売されたころ、試しに1巻を購入。すぐに作品に魅了されました。主人公であるカガリをはじめ、魅力的なキャラクター達。野心によって繰り広げられる、謀略と腹の探り合い。そして、剣と弓を用いた戦争の鮮やかな描写。作家としての経験を長く積まれた吉岡先生だからこそ、ここまで見事に書けたのだと思います。
白河のお気に入りキャラは、ナナキ。女傑という言葉ほど、彼女に似合う言葉はないでしょう。父である王との仲があまり良くありませんが、部下達からは慕われる指導者の器を持った女性です。一族から冷遇される者同士、波長が合うのか(?)カガリとも絡みがあります。
本作は全6巻(本編5巻と、0巻にあたる『生誕編』)。後書きによれば、当初から本編は全5巻の予定だったそうです。コンパクトに纏まった作品、と思われるかもしれませんが、内容は濃いですよ。ラノベらしく可愛い女の子キャラもちゃんといますし(メインヒロインは、カガリの異母妹です)、とても読みやすい作品でした。
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