第10回 神曲奏界ポリフォニカ

今回、ご紹介するのは『神曲奏界ポリフォニカ』シリーズです。


あなたは、「シェアード・ワールド」という言葉をご存知でしょうか。簡単にいえば、一つの世界観を複数の作家、作品で共有し、作り上げていくものです。作家、作品によって作品内の歴史が異なっていくパラレルワールド(平行世界)ではなく、複数の作品が全て一つの歴史年表として組み込まれます。それは少し間違えれば、歴史の矛盾を生んでしまう危ういものですが、上手く機能すれば壮大かつ緻密な世界が出来上がります。


私達の世界と同程度の文明レベルの異世界。そこでは、精霊が当たり前の存在として、人間と共に生きています。精霊は、人間の奏でる「神曲」と呼ばれる特殊な演奏によって、活動エネルギーを得ることができます。神曲はただ演奏が上手なだけでは不可能で、奏者の精霊への想い(精神エネルギー)を乗せることで生み出せます。神曲を演奏し、精霊の力を使役する人間が、「神曲楽士」(ダンティスト)と呼ばれる国家資格の職種です。


本シリーズは主に、次の作品が存在します。

●神曲楽士を養成する学院に通う青年と、彼と契約を交わした女精霊の物語。後に、学院を卒業し、正式な神曲楽士となって働く社会人編の物語。榊一郎先生の「クリムゾン・シリーズ」。

●クリムゾンと同じ都市、同じ時代。精霊に関わる犯罪を捜査する刑事、少女と大柄な男のコンビの物語。大迫純一先生の「ブラック・シリーズ」。

●ブラックから派生したスピンオフ、精霊探偵の男の物語。同じく大迫純一先生の「レオン・ザ・ゴールド・シリーズ(旧・レオン・ザ・リザレクター・シリーズ)」。

●クリムゾンから遥か昔、精霊島と呼ばれる空に浮かぶ島を舞台とした、精霊と楽士の物語。高殿円先生の「ホワイト・シリーズ」。

●クリムゾンやブラックとは別の都市。ある理由から神曲を否定するニートの主人公と、無理やり使役(?)されることとなった女精霊の物語。築地俊彦先生の「ぶるう・シリーズ」。

●クリムゾンと同じ都市。傲慢かつ一流の音楽士(神曲楽士と違って、純粋な演奏家です)と、彼に押しかけで弟子入りする少女の物語。あざの耕平先生の「ダン・サリエル・シリーズ」。

●クリムゾンと同じ学院が舞台。先天的な聴覚障害者の少女が神曲楽士を目指す物語。榊一郎先生の「エイフォニック・ソングバード・シリーズ」。


これだけシリーズが多いと、どれから手をつければ良いのか、迷う方もいらっしゃるでしょう。まずは、クリムゾンの学生編(クリムゾンSシリーズ)から読むと、世界観を理解しやすいかと思います。クリムゾンの社会人編とブラックは、互いの仕事の都合上、登場人物達がよく絡みますので、「ああ、こっちのお話とあっちのお話が、このタイミングで交差するのね」と知れば、思わずニヤリとしますよ。クリムゾンのメインヒロインである女精霊は本シリーズの核となる存在でもあり、他のシリーズでも強い存在感を示しています。クリムゾンとホワイトは彼女を含め、シリーズの根底の設定にも大きく関わるお話が展開。それもあって、他シリーズのネタバレになる要素も。


白河のおすすめは、ブラック・シリーズ。大迫先生が日本推理作家協会に所属なさっていたということもあり、精霊というファンタジー要素と、ミステリー・サスペンス要素が上手く織り交ぜられた作品です。特に主人公コンビ(女主人公のマティアが可愛いんですよ)がいい! 物語はシリアスがメイン。大迫先生が逝去なさいましたが、ブラック・シリーズは無事完結しています。


クリムゾン、ブラック、ホワイトはキネティックノベルとしても展開(要は、選択肢のないビジュアルノベルゲーム)。クリムゾンは二度、アニメ化もしました。それだけ大掛かりなシリーズで、多くのファンを獲得した人気シリーズです(白河としては、ブラック・シリーズのアニメ化ぷりーず)。

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