第11回 住めば都のコスモス荘
今回、ご紹介するのは、『住めば都のコスモス荘』。作者は、阿智太郎先生です。
保育士(正確には、発売当時の都合で、作中の名称は「保父」です)を目指して専門学校に通っていた主人公。しかし、ピアノが弾けないせいで、彼は落第してしまいます。ただでさえ学費と仕送りで家族には迷惑をかけているのに、どうしよう……と悩んでいた彼に転機が訪れます。遥か宇宙の彼方にある製品開発競争に巻き込まれ、新製品のモニターを任されることに。その新製品とは、パワードスーツ。ライバル会社の製品とどちらを採用するのか、銀河連邦警察が性能テストをするそうです。ただし、主人公とライバル会社のモニターは、その正体を知られた時点で失格。さらに銀河連邦警察は、囚えていたA級宇宙犯罪者をテストに利用、上手くモニターの正体を暴けば、無罪放免になると条件を出されていました。それぞれの思惑が絡む中。主人公は正義のヒーロー・ドッコイダーとなって犯罪者を逮捕し、モニターとしての仕事を全うできるのでしょうか。
主人公とライバル会社のモニター、それに加えてA級宇宙犯罪犯達は、銀河連邦警察の企みにより、コスモス荘という一つのアパートの住人となります。もちろん、主人公達は互いの正体なんて知る由もありません。普段はご近所さん同士、親睦を深め。ヒーローや犯罪者に変身すれば、必死に戦います。ヒーローもののお約束を守ったり、ときに大きく外したりしながら、主人公達は奇妙な連帯感を育んでいき。
……とまあ、あらすじはこれくらいにして。とりあえず言えることとして、本作はとにかくお馬鹿な作品です。それでいて、心がほんわかするストーリーでもあります。この絶妙なさじ加減が、阿智太郎先生作品の最大の特徴でしょう。主人公が、保育士への夢に向かって、挫折と頑張りを繰り返す姿も好感度高し。阿智太郎先生の作品の主人公は、どいつもアホだけど嫌味がなくていいですね。ちなみに、阿智太郎先生が後書きで「僕は本作を本格派SF小説だと思っている」とおっしゃっていますが、無視。
白河のお気に入りキャラは、野菊朝香。ライバル会社のモニターを務めることになった女性で、保育士を目指して主人公同じ専門学校に通っています。コスモス荘にいるときは、昼間から缶ビールを片手にくつろぐ、ちょっと駄目な人。でも、彼女もまた、自分が保育士に向いていないんじゃないか、と悩む一人の若者です。少々ガラが悪くて喧嘩っ早い性格ですが、たまに見せる繊細さが良いですね。
本作では、当時白河が大好きだったギャグ漫画『エルフを狩るモノたち』の作者、矢上祐先生が挿絵を担当。それを知り、「どんなアホなギャグストーリーになるんだ」と発売前から期待に胸を膨らませていたのを覚えています。後に矢上先生が漫画版を連載なさり、アニメ化までしちゃいました。ちなみに、主人公の声は浪川大輔さん。小説版や漫画版で本作を知った方も、浪川さんのファンの方も、アニメ版第五話は特に必見です。もうね、最高に笑える。
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