第07回 ストレイト・ジャケット

今回、ご紹介するのは『ストレイト・ジャケット』。作者は『棺姫のチャイカ』や『アウトブレイク・カンパニー』などでお馴染み、榊一郎先生です。


迷信とされていた魔法が科学として証明された世界。その便利さのおかげで魔法は爆発的に世界中に普及しましたが、魔法を使用すると『呪素』と呼ばれるものが人間の体内に蓄積します。それが許容量を超えたとき、人間は『魔族』という化け物へと変貌してしまうことに。現在では、生まれつき人間の体内に呪素が一定量溜まっており、一度でも魔法を使用すると魔族化します。それを防ぐため、人間は『モールド』と呼ばれる鎧を開発しました。これのおかげで、魔法は回数制ではありますが使用可能(制限回数を超えると魔族化します)。モールドを着用し、魔族化した存在を狩る人間が、『戦術魔法士』という国家資格を持った職業です。


主人公のレイオットは、無資格の戦術魔法士。ですが、魔族事件の増加のせいで戦術魔法士の人手が足りないため、警察に半ば黙認されています。彼の助手を務めるのは、カペルテータ。彼女は、魔族に強姦された女性から生まれた、『先天性魔法中毒者』と呼ばれる少女です。先天性魔法中毒者は差別されがちで、さらにその保護者が無資格の戦術魔法士ということで(レイオットの外見と身に纏うオーラが胡散臭いのも、大きな要因)、世間からは忌避されています。そんなある日、労務省で働く女性ネリンとの出会いを境に、レイオットは彼女から戦術魔法士の資格を取るよう再三迫られることに。


本作は、全体的にダークな世界観とストーリーで展開される作品です。人間の弱さと醜さがこれでもか、というくらいに描かれています。当時、榊先生は『スクラップド・プリンセス』という姉兄妹愛の強いシリーズ作品を刊行なさっており、ダークさを織り交ぜながらも芯はハートフルな内容でした。それに対して本作はハードボイルドで、陰惨なシーンの目立つ作品。そのギャップに、はじめて本作を読んだファンの多くは驚かされました。榊先生ご自身、後書きで『自分の中の暗黒成分が溜まらないと書けない』とおっしゃっています。結果として読者を選ぶ作品となりましたが、魅了されたファンも多く、後にオリジナルビデオアニメ化もされました。本作のおかげもあってか、榊先生の作家としての幅の広さが証明されることとなります。


白河のお気に入りはカペルテータ。彼女を語る上で外せないのが、彼女の生い立ちを描いた3巻と4巻です。はっきり言って、どこまでも救いようのない内容でした。ですが、その過去があるからこそ、ネリンをはじめとした身近な理解者の存在が、カペルテータの精神を育てていくのです。もう一人のお気に入りは、アルフレッド。レイオットとは旧知の敵キャラです。ある生い立ちから、精神的に歪みきったマザコン。物語後半、彼が中心となって大暴れする内容の巻があるのですが、そこでの彼とレイオットの対峙は必見です。


何度も申し上げますように、本作は読者を選ぶ作品です。ですが、裏を返せばそれだけの尖った魅力があるということ。ダークなストーリーを好む方には、本作をぜひオススメします。

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