第14回 俺のかーちゃんが17歳になった

今回、ご紹介するのは『俺のかーちゃんが17歳になった』。作者は、弘前龍先生です。


父の病死により、母子家庭で育ってきた主人公と、その妹。母は若い頃は芸能人でしたが、結婚を機に引退。父の病死後は主人公達のことを考え、華やかな世界に戻ることなく、スーパーのレジ打ちや遊園地の着ぐるみのバイトなどで、コツコツと地道に働いていました。そんなある日、母は『17歳教』なる怪しい団体の会員となり、儀式によって17歳に若返ったのです。その理由は、生活費を稼ぐため。40歳を過ぎて雇ってくれるお店が減ってしまい。困った母は17歳に若返って、芸能界に復帰しようと決めたのでした。


息子と娘のことを第一に考え、必死に生きてきた母。彼女は芸能界に復帰し、アイドルになります。それは一見、輝かしい生活のようですが、現実は甘くありません。過密なスケジュールで身体を壊すこともあり、それでも笑顔で無理やり仕事へ。


姉萌え? 妹萌え? いいえ、時代は母萌えです。


本作は親子愛を描いた作品です。母の強さといいましょうか、「息子と娘のためなら、いくらでも頑張れる」という、強い女性です。主人公は、母の痛ましいまでの努力を目にし、彼女に少しでも楽になってもらいたい、と願うように。登校拒否気味の妹と協力して、母を支え、一方で17歳教の真実を探っていきます。


「母が17歳に若返った」という出だしを読んだとき、白河は「あー、出落ちのネタかな」と考えていました。後の展開はギャグが続くんだろう、と。ですが、読み進めていくと共に、その認識を訂正。変化球こそ使っていますが、紛れもなく母子の愛情をぎゅっと詰め込んだ作品でした。


白河のお気に入りキャラは、やっぱりメインヒロインである母親の和美。彼女を中心としたこの物語は、彼女の持ち前の明るさと芯の強さがなければ、成立しませんでした。母親が萌えキャラ、というと抵抗感を覚える方もいらっしゃるかと思います。でも、騙されたと思って読んでみて下さい。読後は、和美に萌え、彼女の無償の愛情にぐっとくることでしょう。


17歳教と聞き、声優の井上喜久子さんを思い浮かべた方へ。1巻の帯には、しっかりと井上さんの推薦文が載っています。つまり、教祖の公認ラノベ。それを本屋でたまたま読んだ白河が購入を決めたのは、内緒。


最後に。母親萌えがラノベ業界を席巻する時代が来ますように。

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