第15回 タイム・リープ あしたはきのう
早いもので、この企画も15回。今回は、不朽の名作と名高いあの作品をご紹介します。『タイム・リープ あしたはきのう』(上下巻)。作者は高畑京一郎先生です。
主人公は県立高校に通う少女。ある日、彼女は自分では月曜日と思って登校したら、実は火曜日だったという勘違いをします。ですが、月曜日のときの記憶がありません。不思議に思いながら帰宅すると、自分の日記に『あなたは今、混乱している。でも、それは記憶喪失ではない。若本君を頼れ。頼っていいのは彼だけだ』という内容の記述が書かれていました。それは、紛れもなく主人公自身の筆跡です。若本君といえば、秀才のクラスメイトですが、冷血漢という印象の少年です。彼を頼れとはどういうことなのか。翌日の水曜日、実際に相談してみましたが、冷たくあしらわれてしまいました。その直後、頭上から衝撃を受け、昏倒。次に目覚めたら、今度は木曜日になっていました。薄気味悪い感覚に襲われながら、再び若本君に相談。すると、彼からこう言われます。君は、意識だけがタイムトラベラーになった、と。肉体ではなく精神だけが、この一週間の時間を移動している。その不可思議な現象がもたらす結果は何なのでしょうか。
近年で時間移動もの、といえば、「Reゼロから始める異世界生活」や「シュタインズ・ゲート」などが人気ですね。それらの作品と今作が大きく異なるのは、「同じ時間に巻き戻る=つまりループする」ことがない点です。月曜日から火曜日へ、水曜日から木曜日。あるいは、再び水曜日に戻ったかと思いきや、前回気絶した直後だったり。一見、バラバラに思えるこの時間移動は、物語を追うに従い、まるでパズルのピースがはまるように、一つの事実へと行き着きます。その綿密に練られたプロットは当時、多くの読者を驚嘆させました。その高い評価により、ラジオドラマ化、実写映画化もされています。
高校生だったころの白河は、この作品を世間から大きく遅れて購入。その作品としての完成度の高さに、度肝を抜かれました。下手をすれば、読者を混乱させるだけになってしまう恐れのあるプロットですが、見事に引き込まれました。もしも、「プロットをもっと磨きたい」という作家志望者の方や、「完成度の高い作品を読みたい」という方がいらっしゃるなら、絶対に本作をおすすめします。
白河のお気に入りキャラは、本作の最大の功労者である若本君。最初は嫌味で鼻持ちならないやつだな、と思うでしょう。ですが、主人公のタイムリープと共に、次第に主人公と惹かれ合っていきます。「シュタインズ・ゲート」で、主人公が限られた時間を繰り返すにつれて、メインヒロインとの仲が縮まっていく過程が好きだった方。本作では、あれと似たような感覚を抱くのではないでしょうか。
本作が誕生したのは、もう20年以上も昔。人によっては、「古臭い」「カビの生えた古典だ」と忌避しがちかと思います。白河はあえて断言します、それは勿体無い! これほど見事に練り上げられた作品には、そう出会えるものではありません。作家志望者にとっては、教科書に選ばれるべき作品の一つでしょう。
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