第20回 ラグナロク

今回、ご紹介するのは『ラグナロク』。作者は安井健太郎先生です。


「闇の種族」(ダーク・ワン)。人類を滅亡寸前まで追い込んだ異形の存在。人類は闇の種族に対抗するため、ラグナロクと呼ばれる兵器を生み出しました。大剣の形をしたその兵器の破壊力は凄まじく、また剣の鍔元には人工知性が埋め込まれています。量産されたラグナロクのおかげもあって、人類は闇の種族との戦いを互角まで持ち直しました。


それから5000年が経ち。元傭兵ギルド所属で、訳あって現在はフリーの傭兵として活動する男、リロイ。彼はラグナロクのうちの一振りを相棒としていました。彼はある日、とあるきっかけでカルテイルという男の裏組織に狙われるようになります。リロイは立ち塞がる存在はどこの誰だろうが斬り捨てる直情的な男。カルテイルと敵対行動を取ります。そこに、昔の因縁を持つ女、レナと彼女の妹が絡み合い、それでもリロイはただひたすらに前へ。闇の種族との戦い、カルテイル、それらがリロイ自身も知らない秘密の一端を見せることになるのでした。


本作は、主人公リロイの行動を、愛剣であり相棒であるラグナロクの視点から追う物語です。安井先生のデビュー作であり、長期シリーズ化されました。巻を追うにつれて、どんどん広がり深みを増す世界観。リロイをはじめとした超人達のド派手なアクションシーン。一癖も二癖もある登場人物達。それらが上手く織り交ぜられた凄まじい熱量は、読者の意識と興味をグイグイと引っ張り、魅了します。ですが、残念ながら諸事情により、シリーズは途中で未完のまま終了となりました。白河はそれを受け入れられずシリーズ再開を信じ、未練たらたらで何年間も毎月、角川スニーカー文庫の新刊リストをチェックしていました。


そうして、長き時を経て。『ラグナロク』シリーズは復活しました。現在はレーベルをオーバーラップ文庫へと移籍。『ラグナロク:Re』とタイトルを変え、原作1巻部分から内容を再構成しました。安井先生の後書きやツイッターを読む限りでは、このまま再構成版のシリーズは続くものと思われます。2018年8月時点では2巻まで発売中。リブートの名に相応しく、ストーリー構成に大胆なアレンジを加えながらも、芯の部分は昔のまま。なので、昔のファンの方も新規の方も、皆さん楽しんで読めるのではないかと思います。今度こそ、今度こそは完結まで読みたいです、安井先生! 信じていますから!


白河のお気に入りキャラはたくさんいますが、あえて人数を絞るなら。1人目はリロイの育ての親、リュヴィール。凄腕の傭兵です。彼の教育のおかげで現在のリロイの強さがあるのでしょうが、情操教育をもう少しまともにできなかったものでしょうか(笑)。2人目はジェイス。リロイの元相棒でしたが、理由あって道を違え。現在はヴァルハラと呼ばれる組織の一員として働いています。どんどん精神的に堕ちていくのが、白河は好き。でも、その結果として外伝『アウトサイダー』で……。3人目は、ネロス。彼は闇の種族で、主のため、友のため、大義のためなら進んで汚れ役を買って出る男です。他にもたくさん魅力的なキャラはたくさんいますが、これ以上はキリがないのでやめておきます。


本作は、ド派手なバトルもののジャンルが大好きな方に、オススメです。旧シリーズを全部読むのが先か、それともリブート版からじっくりと続きを楽しみにするのか。その選択は読者次第。

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