第05回 12月のベロニカ
第5回、紹介させていただくのは『12月のベロニカ』。貴子潤一郎先生のデビュー作です。
物語の舞台となる、ある異世界の大陸で、信仰されている女神がいました。その女神に選ばれ、依代となるのが『ベロニカの巫女』と呼ばれる女性です。代々、巫女に選ばれた女性は、その日から死ぬ日まで眠り続けます。その間、巫女を守護するのが、『ベロニカの騎士』。騎士は巫女によって選ばれ、女神の力で不老不死となっています。
主人公の少年フレイルは、次期の巫女となる少女と幼馴染でした。フレイルは、ベロニカの騎士となって少女を守る、と彼女と約束。10年の努力の末、次期ベロニカの騎士候補に選ばれました。騎士候補達の間では、少女とフレイルが幼馴染であることを知り、「どうせ次の騎士はフレイルなんだろ」と反感を抱かれています。そんなある日、敵国の侵攻によって巫女を拉致されそうになり、フレイル達騎士は少女を連れて脱出。追手によって窮地に立たされたとき、謎の隻腕の男、ハキュリーに救われます。フレイルは彼を警戒しますが、騎士団長はハキュリーを護衛に加えます。フレイルはハキュリーに青臭さと未熟さをからかわれながら、鍛えられていくことになります。
今作はベタな主人公と幼馴染の絆を描きながら、同時に伏線をあちこちに散りばめた作品です。それらを読者が理解したとき、絆の深さに心打たれることでしょう。その伏線のはり方が絶妙で、さすがは大賞受賞作と絶賛したくなる完成度でした。読後に「やられた!」と思うか、「なるほど」と頷くかは読者次第。
しかし、その伏線はあくまでも物語のスパイス、と白河は思います。この作品の真の見所は、そのテーマの美しさ。……も、最大級のネタバレになるので、ここではお話することができませんが。読後感も素晴らしいので、ぜひ読んでいただきたい一作です。
余談。
貴子先生はデビュー後、短編集『眠り姫』を世に出しています。そのうちの表題作『眠り姫』は、舞台は現代日本でファンタジー要素0です。ですが、『12月のベロニカ』と同じく「ヒロインが長期間眠る」という設定を使用。内容としては、現在ならライト文芸にカテゴリされる作品で、こちらもオススメです。
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