レイヤー1 【4/7】
カモメ──?
聞き間違いかと思い、似た
首を
「………?」
音はカモメのデスクから響いてきている。工兵は
………!?
カモメの両手は目にも止まらぬスピードでキーボードを
その間、彼女はずっと工兵達に顔を向けている。
「藤崎さん、お休み中にいくつか電話がありました。T工業の
藤崎の顔から血の気が引いていく。彼は
「そういえばカモメさん、
カモメはうなずいた。
「いつもみたいにラボで泊まってますよ。朝方まで作業してたから今は力尽きて寝てるんじゃないですか」
「悪いけどちょっと起こしてきて。いくつか
「大丈夫です。こちらで
にっこり笑ってカモメは工兵にウィンクした。それで安心したのか、藤崎はパーティションに引っ込んで電話をかけ始めた。
あとに残ったのはカタカタという乾いた
「
そう言って人なつっこい表情を浮かべる。工兵は
「……はい、大丈夫ですけど」
「ありがとう。じゃあ工兵君、君の席はここ、あたしのすぐ後ろね」
カモメは小首を傾け工兵の後ろに
「文房具一式は引き出しに入れてあるから、足りないものがあったら言ってね。PCはOSしか入ってないんであとのセットアップは自分でお願い。メールのアカウント情報はこれ、あとOfficeのメディア」
ぽん、とクリアファイルを手渡される。中にCD─ROMと書類が挟まっていた。
「で、こっちが服務規程と秘密保持規程。ざっと目を通したら最後のページにサインしてあたしに戻して。それからこれが通勤経路
腕の中にどんどんと書類が
「──で、これが正式な入館カードが来るまでのゲストカード。………、と、
「……とりあえず、ないです」
工兵は疲れ切った表情で答えた。
正直まったくついていけていなかった。が、この場で一つ一つ
「OK、じゃあ早速席について──と言いたいところだけど、その前に一つお
「……はい?」
工兵は目をしばたたいた。カモメは
「さっき
皆まで言う必要はなかった。工兵と会話しながらカモメは猛烈な勢いで業務をこなしている。とても手を
「分かりました。……えっと、ラボルームってどこにあるんですか?」
そこの──と、カモメは
「扉を出てもらって廊下の突き当たり、サーバルームを過ぎた右手よ。
「分かりました」
一礼して
書類と
振り返るとカモメが心配そうな表情でこちらを見ていた。
「踏まないようにね」
………?
工兵は首を
だが意味を
───。
疑問に思いながら部屋を出る。
廊下はオフィスの外周に沿って作られていた。ブラインド越しに
室内に
なんとも幻想的な光景だった。夜の工業地帯を遠目で眺めた時のような気分。形容しがたい感情に突き上げられ工兵は立ちすくんだ。一体なんの部屋なのだろう。……いや、さっきカモメが何か言っていた。
サーバと言われても工兵は
ざわりと気分が
この会社に来て、初めてIT業界に足を踏み入れた実感を覚えた。そうだ、自分は
(うん)
表情を
「……うっ」
彼は顔をしかめた。
広さにして八畳ほどの
──とんでもない散らかりようだった。
知らずに覗き込めば台風でも通り過ぎたのかと思っただろう。
……こ、こんなところで寝ているのか?
疑問に思いながら足を踏み入れる。
「いてっ」
(危ないなぁ)
ていうか、カモメさんが踏まないよう言ってたのってこのことか?
───。
ようやくのことで長机にたどりつく。ここまで来ると床の
とりあえず机の向こうだけ見て、それで見つからなかったら入り口に戻ろう。大声で相手の名前を呼んでみるとか、
「……よっと」
左手を机に突き右足を前に出す。慎重にバランスを取りつつ机の向こうを
「……ん」
やや鼻にかかった、子猫の鳴き声を思わせる
工兵は
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