レイヤー4 【3/7】
オフィスに戻るとカモメが
「おかえりー。
「いえ、ちょっと室見さんと食事してきたんで。……って、何してるんですか。そんな格好で」
工兵は
「ちょっと照明の
「いや……だから、なんでカモメさんがそんなことしてるんですか」
「業者が
本当なんでもやってるな! この人!
目を白黒させていると室見が
「何ぼうっとしてるのよ。早く荷物片づけてラボルーム行くわよ。少しでも早く今日の件、検証しとかないと」
「あ、はい」
なんだよもう、せっかちだな。メールくらいチェックさせてくれてもいいのに。
打ち合わせメモを取り分け残りをシュレッダーにかける。ノートPCを
「本当、
しみじみした
「気に入られてる?
「工兵君が。立華ちゃんに」
カモメは明瞭な発音で言った。小首を
「いや……いやいや、それはないです。絶対」
「そうかなー」
「そうですよ。
「余計なこと?」
工兵は
聞きながらカモメはぱちぱち目を
「んー、そういうことか。やるなぁ
「? どういうことですか?」
なぜいきなり藤崎の名前が出てくるのか。だがカモメは質問に答えることなく肩をすくめた。
「ま、とにかく工兵君は立華ちゃんに嫌われてないよ。あの子が人を嫌いになったらね、怒ったりなんかしない。ただ無視するだけ」
「……無視」
「自分のそばに寄せつけない、……なんとなく分かるでしょ?」
ああ、と工兵は
だがだからといって『気に入られている』? ……どうにも実感が
「
ラボルームから
「工兵君」
カモメが
「あんまり納得してないみたいだから、一つだけ言っておくけど」
首を
「あの子──、この会社に入ってから、あたし以外とお昼ご飯食べに行ったことないのよ」
カモメの言葉を
どうにも釈然としない。いやまぁ百歩
……うーん。
腕組みし首を傾げる。
やっぱりカモメさんの
………。
まずいまずい、遅れた上にニヤニヤしていたら何と言われるか分かったものじゃない。表情を
「すみません、遅くなりま」
室見がストッキングを下ろしていた。
………。
工兵は石のように凍りついた。
室見は
彼女は工兵の姿を認めると
「遅い、何してたのよ」
ノオオオオオオ!
「な、な、な、何してるんですか! ちょっと!」
「あんたがあんまり遅いから着替えようと思ったのよ。この服、
「だ、だからってこんなところで脱がなくてもいいでしょ!? せめて
「別に裸になってたわけでもないんだし、いいでしょ。何
へ、変?
変なのか、自分が。
いやまぁ
「
な、わけあるかああ!
何これ!? なんなのこの状況。
混乱のあまり意味不明な想像が
「もういいわよ」
永遠にも思える時間の末、声をかけられた。振り向くとシャツワンピース姿の室見が立っている。片手にスカートとストッキング、ブラウスをまとめ引っかけていた。
「どうしたの?」
怪訝な表情で室見が
「なんでも……ないです」
そう答えるしかなかった。室見は本当に、何事もなかったかのようにあっけらかんとしている。見ているこっちが
なんなんだ、この人──
今度という今度こそ本当に分からなくなりそうだった。天才的な技術力、ビジネスパーソンとしてのプロ
「え、えっとそれで何からやりましょう。検証作業」
「そうね──」
「とりあえず
「あ、僕やります!」
ノートPCを机に置き工具を取り上げる。
「とってくる機材は──どれですか?」
「ウニとイクラ、スイッチはアナゴで」
スルガシステムの検証機材はなぜか
「な、何してるんですか」
かすれた声で
「
「ど、どうしたんですか」
「コンセント、フリアクの下に
片膝を胸に引き寄せ奥に潜り込む。反対側の脚を残したままぐいと
「やります! そっちも僕がやりますから!」
これは──たまらない。
ぶっちゃけ仕事にならない。
カモメに頼んで、室見に作業用の服くらい買ってきてもらおう。何も専用の作業着じゃなくても、とにかくズボンとかキュロットとかパンツルックのようなものを。なんなら自分が金を出してもいいから。──
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます