レイヤー2 【4/10】
「おはようございまーす」
部署名のプレートを
向かいに立っているのは背の高い
「おはよう、
席につくなりカモメが
「おはようございます。……皆さん早いですね」
「藤崎さんは徹夜、
うわぁ……。
相変わらずひどい状況だった。だがまぁさっきの部署よりは
「……え? そんな、聞いてませんよ。困ります」
不意に不満そうな声が
振り向くと藤崎が
「
室見は小さな
「そんなの事前にスケジューリングしていなかった向こうが悪いんじゃないですか。客側のタスク管理が甘いのをこっちに押しつけられても困ります」
「いやまぁ、……そうなんだけどね。それはそうなんだけど」
藤崎は頭を
「あそこはうちの上得意だから。今後の案件を考えると
言いながら哀れなくらい小さく身を
「……ああもう、分かった。分かりました。やりますから頭を上げてください。今週中ですね」
断ち切るように言って身を
「ちょっ、ちょ、なんですか? 一体」
「いいから
強い力で立ち上がらされ、引きずっていかれる。
いや、え、ちょっと何? 何なの? 思わず
ラボルームに入るなり工兵を長テーブルの手前に座らせた。自分は散らかり放題の
「本当だったらあんたみたいな
彼女は
「状況を説明しておくわ。今、私は五つの案件を抱えてる。どれもプライオリティマックスで納期は今月中。遅れたら大クレームの案件ばかり。……て、案件って分かる?」
「……いえ」
室見は盛大な
「案件ってのは仕事……プロジェクトって考えてもらえばいいわ。それぞれお客さんがいてやることが決まってる。たとえばA社メールサーバ
つまり室見は今五つの仕事を並行してこなしているということか。たった
工兵はごくりと
──なんというか、
室見はホワイトボードの上でマーカーを
「特に納期が近いのはこの二つ。T不動産のコアL3構築とM情報のインターネットゲートウェイリプレースね。このうちT不動産の方はあらかた検証が終わって
「………」
「ぶちこわそうとしてくれたわけだけど」
「………!」
二回言った!
「まぁ全然気にしてないから、この件はいいわ」
………。
「問題はもう一個の案件。M情報の方ね。もともと来週いっぱいで出荷する予定だったんだけど、さっき
「………」
「というわけで」
室見はくるりとマーカーを回し、M情報の社名の横に大きな○を描いた。
「これ──あんたの担当」
………。
「……え?」
工兵は目をぱちくりさせた。
ちょっと待った。……今なんて言った、この人。
「聞こえなかった? あんたがこの案件を担当するの。私は別案件をこなせるし、あんたは実地で仕事を学べるし一石二鳥でしょ?」
工兵は
「……い、いや……でも、自分みたいな新人がいきなり……その、機械をいじるなんて」
現実の
だが室見は涼しい表情を崩さなかった。
「技術的には初歩の内容だし、案件資料もちゃんとまとまってるわ。あんた日本語くらい読めるんでしょ。コピー機の扱いは
「………」
室見は
「案件
「ルータ……?」
「IPレイヤーでトラフィックをコントロールする装置。電話で言う交換機みたいなもんと思ってもらえればいいわ」
………。
さっぱり分からない。
「
「NAT……?」
「アドレスの変換規則。……細かい用語はネットで
「はい?」
「準備完了、作業にとりかかって」
───。
なるほど……準備完了ね。これで用意
できるわけないだろ!
工兵は目を
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