レイヤー2 【9/10】
「ごめん」
ラボルームに入るなり室見に謝られた。
工兵はぽかんと口を開け立ち尽くした。
深呼吸し、
………、は?
一体今、何を言われた。耳を疑っていると
「
あれ、冷たい。
「何すんのよ!」
殴られた。
「い、いや、そのなんかおかしなこと言い出してるから。
「なんで
「──カモメに怒られたのよ。OJT張り切るのはいいけど、新人の
「……はぁ」
真っ当
「あー、だからもういいわ。昨日の仕事は
「あ、いや」
ちょっと待った。それは困る。何のために自分が昨晩、
室見は
「何よ」
「……ええっと、その。だからですね」
工兵は
「……昨日の仕事、もう一度僕にやらせてもらえませんか」
「はあぁ?」
室見の
「あんた何言ってるの? 昨日一日かけて全く進まなかったでしょ」
「それはそうなんですけど、……なんていうか今日はちょっとできそうな気がして」
「なんで」
詰問するような
「あのあと家に帰ってから
説明を終えた
「
「……え?」
「午後七時、宅配便の最終
室見の声は抜き身の
いや。
工兵はごくりと
「はい、大丈夫です。きちんと責任を持って最後までやりとげてみせます」
───。
室見はまっすぐに彼を見ている。
思わず
どのくらい時間が過ぎただろう、
室見が
「いいわ、やりなさい。ただしタイムリミットは午後五時、その時点で
「………!」
顔を
「大口
「はい」
「分かりました。五時までに作業を終わらせて報告します」
「あと問題発生時は即レポート、ギリギリまで抱え込まないようにして」
できないならできないで、とっとと白旗を
途中でふっと思い立ち振り返る。工兵は「
「なによ」
「
「な」
室見は
「あ、あたりまえでしょ! そんな当然のこと。あらためて言わないでいいわよ!」
……あれ、なんで怒ってるんだろう。きちんと
「早く作業に取りかかりなさいよ。ゆっくりしている
ノートPCを立ち上げコンフィグのファイルをクリックした。
深呼吸を一回、キーボードに指を置く。
さぁ、──始めよう。
指先をタッチパッドに
コピー、ペースト。スペース。もう一度別の文字列をペースト、エンター。
指先は迷うことなく新コンフィグを書き換えていく。
リズミカルな
………。
リンクをたどるうち目当ての説明を見つける。
なるほど、IPアドレスにはプライベートとグローバルの二種類あるのか。電話でたとえるならプライベートアドレスは
その後も新しい表記に出くわす
───。
どのくらい時間がたっただろう。
飲まず食わず、
工兵は
カーソルが新コンフィグの最終行にたどりついている。[EOF]表記の横に
気づけば時刻は午後四時になっていた。一体どれだけ集中していたのか、まったく時間の流れを忘れていた。
「
工兵は立ち上がった。机の向こうで明るい色の髪が揺れる。室見は
「できたの?」
「はい」
つっけんどんな物言いに、だが
「………」
室見はきつい表情でノートPCを引き寄せた。細い指をタッチパッドにのせ、工兵のコンフィグを
何度も見た光景、
今度は──どうなのだろう。
自信はある。あれだけ調べたのだ。昨日のようにサンプルのコピペでない、一行一行
だが……どうだろう。
余分なコンフィグは一切入ってないはずだ。だが不足についてはどうだろう? 既存機器には存在しない、新
不安な思いで
彼女は
だめなのか?
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