第35話お正月です。

お正月です。

 年末が終わりお正月だ。拓人さんの提案もあって初詣は、仁とひなちゃんと一緒に行く事になったんだ。んでその初詣に行く前、部屋で、ひなちゃんに着物を着付けてもらってるんだよね。それはいいんだけど、これ必要ですか?

 俺は見動きが取れないようにと、ひなちゃんによって魔法で動きを封じられてるんだ。上手く説明出来ないけど、立ったまま金縛りにあってるような感じかな。ズシッと重たい物に押さえつけられて、動きたいのに動けないそんな感じ。でも喋れするので文句を言って見る。

「なんで魔法で動けなくするん?」

「だって、夕陽いごくな(動くな)って言うても、いごくんじゃもん」

 と少し怒った口調で話すひなちゃん。そりゃすみません。だってくすぐったいんだもん。夏に浴衣をはなこばあちゃんに着付けてもらった時は、なんともなかったのに、ひなちゃんに着付けてもらったらくすぐったくて仕方ないんだよ。

 まあだから魔法かけられんだろうけど。

「あとはこのヘアクリップを付けてお終い。はい出来た」

 ひなちゃんは、俺にかけた魔法を解除すると、部屋の隅の姿見の前へ立たしてくれた。

「凄い。いつもの俺じゃないみたい。ぶり(凄い)可愛くなっとる」

「当たり前じゃろ。夕陽は、西条さいじょうで一番の美人て言われた曾祖母ちゃまにそっくりなんじゃもん、かわゆうて、(可愛くて)当然じゃわいね」

 となぜかドヤ顔のひなちゃんが言ってる事はともかく、着る物ひとつで人って変わるんだなと他人事のように思ってしまう。

 明るい黄色の生地に花の模様が散りばめられた着物。いつもハーフアップにしてる髪の毛は、おろした状態でサイドに黄色い花のついたヘアクリップを付けている。これは、絶対に拓人さん褒めてくれるよ。楽しみだな。

 とか考えていたら、急に身体をだるさが襲ってきたし。

「なんか、身体が重いんじゃけど」

「ああ、魔法の反動じゃろ。まあ5分くらいで戻るわいね」

「あっそうなん」

とか話しつつ、俺らは部屋を出た。


ーーー


「お待たせ。って夕陽着物来てきたんだ」

約束の時間ピッタリに現れた拓人さんは、上から下までをマジマジと見ている。

「可愛い?ねぇ?可愛い?」

と俺は、クルリとまわって見せる。

「可愛い。めっちゃ可愛い」

「へへー、褒められたー」

 と拓人さんの手を取り神社の境内へ向かう。後ろからクスクス笑う声がする。

 ふり返ると、着物を着た女子大生らしいお姉さん達が、笑っていた。馬鹿してると思ったけど、違うみたい。微笑ましい光景を見たって感じだ。「兄妹かな?」「かもねー」なんて会話が聞こえてきた。

 そっか俺と拓人さんって、周りから見たら兄妹に見えるんだ。うーんあんまり、うれしくない。

 これで今年の願い事は決まった。そう決まったら早く行かないと。

 憤然と手水舎に行って、手と口を清めたけど、すぐに順番は回ってこない。

 暫くして俺達の番だ。今年はお賽銭奮発して、百円だ。

お賽銭奮発しても、この願いに至っては、数年かかるかな?まぁいいや。


「ねぇ、夕陽何お願いしたの?」

「ええと、これからも拓人さんと一緒にいられますようにって」

「ふーん。本当にそれだけ?」

「あと、家族の健康も願ったよ。アハハ」

と笑って誤魔化す俺をいぶかしげな顔で見ていた拓人さん。だって言える訳ないじゃん。拓人さんの妹じゃなくて、彼女に見えるように、身長と胸を大きくして下さいなんてお願いしたなんてね。




 

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目が覚めたら女子にされてた俺。 猫田 まこと @nekota-mari

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