第18話 18 熱が出ました。また入院

晶視点です。


「 39・6度。上がってる」

「 マジで?」


ベッドに横たわってる夕陽から、体温計を受け取り、僕自身の目でも確かめる。

――確かに、39・6度だ。



夕陽が、いつものように、頭痛を訴えたのは、昨日の事だ。

昨日測った時は、37度少し超えたくらいだった。


今、起きて体温を測ったら、39・6度。

入院決定じゃないか。この調子だと、一週間は、寝たり起きたりの繰り返しだろうな。


こんな時に思い出すのは、昔の事だ。亡くなった人の悪口言いたくないけどさ、伯父さんも伯母さんも、熱が出た夕陽をおばあちゃんや朝陽兄さん。おばあちゃんが亡くなってからは、服部家に託して、知らん顔してたからな。

入院しても、面会にいかなかったみたいだし、まだ、広島の田舎町にいた頃、父さんと伯父さんが、怒鳴りあってるんの見た事あるんだよな。

『自分の子供が、入院しとる時くらい顔見せにこいや! 』『 あんな出来そこないなんぞ知らん。ばあさんや服部の家に、世話まかせとる』なんて言いあいしてたんだよな。


「 ……晶、晶てば、ボーッとしてどうしたん?」

「いや、なんでもない」


体温計を持ったまま、考えこんじゃってたみたいだ。夕陽に怪訝な顔されてる。


「 なんでもないんなら、ええけど。ごめん、父さんか母さん呼んできてくれん?」

「 うん、わかった」


僕が部屋を出ていくと、母さんがいたので、夕陽の体温を伝えた。部屋に入る前に母さんが一言訊いてきた。


「 晶、昨日の事で仕返ししようなんて、考えてないわよね?」


母さんは、僕の短気な性格上、すぐに仕返しとかすると思ってるんだな。でも今日は、大丈夫だ。


「 ……考えとらんよ。高宮のやった事は、許したくないけど。昨日の晩、夕陽から釘を刺されたし」


僕は、昨日一日中、高宮のやつにどう仕返ししてやろうかと、考えてたんだ。

だけど、さっき母さんに言ったように、夕陽に、『 高宮さんに、仕返しなんかせんといてよ (しないでよ)』って釘刺されたからな。仕返しはしないでおく。

――まあどうせ、学校に行ったら、向こうから、絡んでくるだろうけど。その時、夕陽の事を伝えやればいいか。


「 そう。本当に仕返しとかしないでね!正義感が強いのはいいけど。あなたが、でしゃばると、本当にややこしくなるんだから」

「 わかってます。絶対に仕返ししません」

「 お願いよ」


母さんに念押しまでされてしまった。

でも、母さんの言う通りか。僕がでしゃばる事で、事態がよくなるどころか、悪くなるだけだな。


僕は、姉さんと朝食を食べると、学校へ向かう。学校に行く前に、母さんから、夕陽を病院へ連れて行って、そのまま入院させるからと、伝えられた。


学校に着き、僕一人で教室に入ると、案の定、高宮が絡んできた。


「 ごきげんよう、音無晶。あら、音無夕陽は?一緒じゃないの?」

「 どっかの誰かのせいで、熱が出て休みだよ」

「 あらそう」


何があらそうだよ。高宮は、大した事じゃないって思ってるんだろうな。風邪を引いたくらいにしか、考えてないだろいな。まっ普通ならそうだもんな。

高宮は、いつもの決めポーズ。長い髪をわざとらしくかきあげて、昨日と同じ事を言ってくる。



「 で、音無夕陽は別れるって言ってたかしら?」

「 言うとらんし。あっそうそう、さっき言うてなかったけど、夕陽なら入院した」


高宮は、さっと青ざめて、僕の肩を掴み、訊いてくる。


「 嘘でしょ?ねぇ?嘘よね?」


その口調は、いつものお嬢様然とした物ではなく、普通の女の子みたいに、ヒステリックな声だ。



「 嘘じゃない。あいつは、生まれつき、原因不明の病気で、しょっちゅう高い熱を出すんだ。短くて一週間。長ければ、三週間か四週間の入院だな。今回は恐らく、最長の四週間かもな。夏休み前も、40度近い熱が出て、その時は、生死さ迷って大変だった。あーあ、この学校行くの楽しみにしてたんだぜ。でも、編入したてで、こんな目に会うんじゃな。あいつ別の学校行くかも」

「 そんな……」


仕返ししないって言ったのに、結果的に仕返ししちゃった。僕って、性格悪い。


「 そのごめんなさい」

「 謝る相手が違うだろ。夕陽に謝れよ。放課後、夕陽に面会出来るように、親に頼んでみる」

「 本当?」

「 だけど、夕陽の体調次第だ。会って、会話出来るようなら、オッケーが出ると思う」

「わかったわ」


校内では基本、スマホの使用は禁止なんだけど、こっそり使用出来る場所があるから、僕は、そこへ行き、スマホで母さんに電話する。事情を話し、夕陽の状態を聞き出す。放課後に、短時間なら、会えると言われた。通話を終える前、母さんからお小言を頂戴してから、通話を終えた。


高宮に、夕陽に短時間なら会える事を伝えたら、異常なまでに、感謝されてしまって、ちょっと気持ち悪かったのは、言うまでもなかった。



家族全員からのお説教かあ。それはそれで、大変な気がするけど、両親か

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る