第34話 34 年末年始です 2
今日は30日である。桃宮駅駅ビル内にある着物屋さんに俺は母さんと来ていた。正直なところ全然乗り気じゃない。いや夏に浴衣着た時に感じたんだけどね、スカートの時より小股になるし、気崩れしないようにって、きつく着付けてるから苦しかったんだ。着物もそうじゃないかなって思うんだけど。
「ねぇ母さん。どうしても着んといけん?」
と長襦袢を見ていた母さんにそう言ってみたら、母さんの
「どうしても夕陽が嫌って言うなら着なくてもいいんだけどね。……ひなちゃんが持ってきた着物ね。お祖母様。夕陽にとっては、曾祖母様が、夕陽の為にって仕立て直した物なのよ」
「へっ?ほうなん」
「そう。私のお姉さんがいたのは知ってるわよね?」
「うん。お祖母ちゃんや兄貴から話聞いとる。でも成人式の前に亡くなったって」
「そう。その亡くなった私のお姉さん。桜子姉さんが成人式で着る筈だった振り袖を夕陽の着物にって。いつか女の子に戻った夕陽に着せちゃる為に仕立て直しましたって、手紙と一緒に朝陽に託してたみたいよ。だけど、朝陽は着物管理の仕方わからないし、傷めちゃうといけないからって、はなこさんに預けてたみたいだけどね」
「ほうじゃったん」
なんかそんな大事な物を着ないとか言うのって駄目じゃん。ていうかそういう話は、早くしといて下さい。
と心の中でツッコミつつ一つ気になった事を訊いてみる。
「そういや、去年、律に着した着物って誰のじゃったん?」
「去年のお正月の晴れ着の事よね。あれも桜子姉さんのよ。桜子姉さん茶道やってたからね。着物は沢山持ってたから」
寂しそうな懐かしむような表情で話してくれた。
「そういやあの着物。律の棺に入れたんだよな」
思わず去年の春の両親と律の通夜の事を思い出して湿っぽくなってしまった。暫く俺と母さんは、それぞれ考えこんでしまった。
「ああ、ごめんなさい。長襦袢と足袋はあったから、あっちで巾着と髪飾りをみましょうか」
「あっうん。ねぇ俺の髪の毛いじれる程長くないよ。大丈夫?」
「大丈夫よ。髪飾りにも色々あるんだから」
と母さんは、さっきまで暗かったのに、ウキウキと髪飾りを手に取り、あーでもないこーでもないと、髪飾りをえらんでいた。
結局、黄色を主体とした花をあしらった髪飾りになったのたのだった。
お正月は、着物を着て髪飾りをつけよう。
拓人さんの反応が楽しみだな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます