第32話 32 兄貴に怒られちゃった。
広島から戻った翌々日。今朝は兄貴の家にいます。
「熱下がってよかったな」
「うん」
仁とそんな会話を交わしながら、朝食を食べている。
だけど兄貴が恐い。黙々と朝ご飯を食べてる。朝挨拶しただけで、一言も会話は交わしてない。物凄く怒ってるんだ。……まぁ怒る理由分かってるんだけどね。
結論から言うと兄貴が怒ってるのは、熱が出るからと禁止事項だよと兄貴と約束したのに、その禁止事項を破った事を知ってるんだろうな。
自業自得なんはわかってるけど、うぅどんなお説教が待ってんのかな? と考えつつ、兄貴の様子をチラチラと伺いながら朝食を食べる。側にいる仁は俺と兄貴の様子がおかしいのに気がついたみたいで気まずそうだ。俺のせいだね。ごめんなさい。
暫くして朝食を終える。ごちそうさまと、俺が箸を下ろすと、お茶を飲んでいた兄貴が湯呑を下ろした。ついに来るよ。
「夕陽、何か言うことあるんじゃない?」
と兄貴は淡々と言い俺をじっと見つめてる。こういう時の兄貴って声を荒らげたり、睨みつけたりしない。ゆっくりと静かに喋り、相手の目をじっと見つめる。こうされると否応なく自分の悪い事をしましたっていう事を認めさせられる。言い訳とか出来なくなるんだ。
「……兄貴との約束破りました。ごめんなさい」
「 俺と約束ってなんじゃった?言うてごらん」
「『 夜更かし禁止』 『 寒い日、厚着せずに遊びに行くの禁止 』『 遊びに夢中になりすぎない 』の四つです』」
「じゃったよね(だったよね)なのに、なんで『 夜更かし禁止』を破ったん?」
「……これ作ってました 」
俺は、項垂れたままポケットに隠してたある物を取り出した。赤と青のミサンガだ。
「 仁とひなちゃんの婚約のお祝いにプレゼントしたくて作っとったんです。二人にバレんようにするのに、つい夜更かししてました 。ごめんなさい」
項垂れたまま俺は弁明した。今まで兄貴に怒鳴られたりした事ないけど、さすがに今回は怒鳴られちゃうかな。
昨日の熱は37度までしか上がらなかったけど、場合によっちゃ40度近くになってしまうとヤバイもんな。
とか考えていたんだけど、そんな心配は杞憂に終わった。
「 夕陽が、二人を祝いたいという気持ちはようわかった。けどのお、それでお前が体調崩しちゃあ、意味ないんでよ」
「 うん、わかった。もうせん(もうしない)って約束するよ」
兄貴は、『 ええ娘、じゃのう』と言って、俺の頭を撫でくりまわしわした。いつもだったら、髪がぐちゃぐちゃになるから辞めてや!って怒るとこだけど、今日は兄貴との約束を破ったという負い目があったんで兄貴の気の済むまでなでられていたのだった。
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