第27話 27俺も撫でて

11月初めの連休初日。夕陽は熱を出してダウンしていた。

そこに、生理痛も加わって体調は最悪だ。




「 うう、重い。 岩に襲われる。」


自分の寝言と重苦しさで、目が覚めた夕陽は、自分の胸元に乗っかりグーグーと昼寝をする白い子猫に怒鳴った。


「 ニコちゃん!何べんも言うとるじゃろ。人の上に、乗っかるなって!重くて寝られんじゃろ。なんで、調子悪い時に限って人の上で寝るんよ」

「 んにー!」


ニコちゃんと呼ばれた子猫は、夕陽に「別にいいじゃない」と文句を言うをように鳴いてみせる。

夕陽は、ニコちゃんの文句を無視して、説教を始めた。


「 あんね。なんで、俺の調子悪い時に限って、人の上で寝る訳? お昼寝したきゃ、ニコちゃんのベッドでお昼寝しんさいや」


夕陽は、自分のベッドの下にあるニコちゃん用のベッドを示すが、ニコちゃんは、抗議をするように鳴いてみせる。


「 んにー!んにに!んー」

「 寝心地が良かろうと、悪かろうと、俺には関係ないの。 俺が寝れんけぇとにかく、上に乗っかるの禁止。」


夕陽はニコちゃんの抗議をまるっと無視して、強制的にニコちゃんをベッドから下ろす。「 んにー!んにー!」とじたばたするニコちゃんを専用ベッドに連れていった。


「 ニコちゃんのベッドは、ここ! ええね!」

「 んにー。んにー」


ニコちゃんは、相変わらずベッドの中でバタバタと暴れたが、夕陽はさっさと、自分のベッドに戻り布団にくるまった。


「 やっと、普通に寝られる」


夕陽は、そう呟くと寝息をたて始めた。

夕陽が、眠りはじめて数分後。ニコちゃんは自分のベッドから、のそりと夕陽のベッドに移動した。


そして再び、夕陽の胸元に乗っかり昼寝を始めた。


夕陽は、ニコちゃんが乗っかてるせいか、唸り声をあげ始めた。

その頃、雫がお見舞いにやって来た拓人を夕陽の部屋に案内した所だった。


「 なあ、中から唸り声聞こえるけど、ヤバくないか?」

「 本当。やだ、思ったより熱が高いのかな?」


雫は、ソッとドアを開けて、確認する。


「 あー。そりゃ唸り声あげるわ。ニコちゃん下りんさい。」


雫は、夕陽の上に乗っかり昼寝をするそらを下ろそうとする。


「 んにー。んにー。」

「 こら!」


ニコちゃんは、布団に爪をかけて抵抗して離れようとしない。

そこへ拓人が、雫に替わって、ニコちゃんを下ろそうとする。


「 ほら、夕陽がしんどいから下りような。おいでニコちゃん」


拓人は、優しい声を出して、ニコちゃんを呼ぶ。ニコちゃんは、抵抗する事なく、夕陽の上から下りて、拓人の方へ行った。

雫の時は、抵抗しまくったのに、拓人の言うことは、すんなり聞いて下りた。


「 ええっなんで、夕陽の次に可愛がってるあたしより、拓人の言うこと聞くって、どういう事よ。ニコちゃん」

「 そりゃ、ニコちゃんを無理に夕陽から離そうと、するからだよ。多分、落ち着くんだろ。夕陽の側にいるの」


拓人は、抱っこしたニコちゃんを撫でてやる。

ニコちゃんは、ご機嫌なのか喉をゴロゴロと成らしていた。


「 ああ、ずるい、ニコちゃん。拓人さん独り占めしとる」


いつの間にか、目を覚ました夕陽が、そらを恨めしそうな目で見ていた。


「 おいおい、猫に焼きもち焼くなよ。」

「 この前 おにゃんこさんに焼きもち焼いた人に、言われとうない。ずるい。ずるい。ニコちゃんばっかり、可愛がって」


んきゃーと喚く夕陽。熱のせいか、子供のような事ばかり言っている。


「 俺も、撫でたりしてほしい。」

「わかった。わかった。」


拓人は、ニコちゃんを下ろすと、夕陽が喚きちらすのが終わるまで、頭を撫でていた。




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