第26話 26 可愛いは正義だ。
「明日はどんな髪型がいいかなあ」
10月の最終土曜日。俺は、ティーン向け雑誌をパラパラまくりながら、そう呟く。
最近の俺は、休みの度にいろんな髪型にするのにはまってる。
といっても、俺の髪の毛は肩の手前までの長さしかない。
出来る髪型は限られてる。例えば、前髪をヘアピンで止めてみるとか、カチューシャを付けてみるだとか、あとは、いつもハーフアップで纏めてるけど、そのハーフアップを止めるヘアアクセを変えるくらいだろうか。
「 あっこれ可愛い。けど無理だな」
写真の女の子の髪型。真似したいけど長さが足りないな。
雑誌を捲ってもこれ以上気になる写真はみつからない。俺はため息と共に雑誌を閉じた。
「 明日、拓人さんとデートなのにー。どうしょうかー( どうしよかな)」
なんかいい本無いかなーと本棚に視線を送ると、とある漫画が目に入った。
タイトルは『スクールアイドルライブ』内容はスクールアイドルがテーマの漫画だ。俺はなんとなく、漫画を手にしてパラパラと捲っていく。
「 あっこの髪型いいかも」
この髪型なら俺にも出来るかも。それなら服はあれがいいかもね。
俺は早速机の引き出しから櫛や鏡を取り出して、髪をいじり始めた。
――拓人さんなんて言ってくれるかな?
俺はそんな事を考えながら、顔がニヤケてしまうのだった。
―――
翌日。旭ヶ丘駅前商店街。ここは県内でも、最大の繁華街だ。だからか、中高生が友達やカップルで歩いてるのを沢山見かける。
そんな中俺は、商店街入り口で拓人さんが来るのを1人待っている。
待ち合わせ時間は、10時。時間まであと5分。そわそわしながら待っていると、拓人さんがやって来た。
「 待った?」
「 いやそんなに待っとらん」
とお決まりのやり取りをする俺達なんだけど、拓人さんの様子がおかしいんだ。
目を反らすというか。
「 どしたん? 俺の方見てくれんけど」
「 いやぁ。ごめん。その格好って『スクールアイドルライブ』のまどかの真似だよね?」
「 うん。変?」
ちょっと不安になってきた。今日の俺は、拓人さんが言う通り『スクールアイドルライブ』の主人公 まどかちゃんの真似だ。服は制服を真似た物を着てる。白いブラウスに赤に紺のストライプのネクタイ紺のカーディガンと紺に赤のチェックのプリーツスカート。足はこのニーハイ。髪型はサイドポニーって言うのかな? こめかみあたりの髪を白いリボンで纏めてるんだ。
――やっぱり普通の格好にすればよかったかな。そう思ってると、拓人さんの反応は違ってた。
「 そうなんだ。似合ってる。それに『スクールアイドルライブ』のまどか大好きだから、ちょっと嬉しい」
拓人さんは苦笑いしながらそう言った。
ちなみに『スクールアイドルライブ』が好きな事は、親友である仁にも内緒なんだそうだ。
「 よかった。拓人さんに誉めてもらえて嬉しい」
俺は、そう言ってたくさんさんの手を握り商店街へ向かった。
一日中拓人さんをふりまわしたのは言うまでもなかった。
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