第6話 6頼めば?
朝起きて、洗面所に行くと、白いブラウスと黒いプリーツスカートを着た女の子が身支度していた。
彼女の名前は、
「 お早う、
「 お早う、夕陽」
ボブカットの髪を丁寧にすいてる晶の横に立って、俺は、水でさっさと顔を洗ってると、くいっと髪を引かれたんだ。
「 何~。」
痛みで振り向くと、キッツイ目付きで晶が睨んでる。
めっちゃ恐い。目付きの悪い俺が、言うのもなんだけどさ、目付きの悪い人に睨まれんのって、めっちゃ恐いのね。――今度から気をつけよ。
「 夕陽、お前昨日風呂から出たあと、ちゃんと乾かした?」
「 乾かしとらん。」
俺の髪は、今現在、肩に付くか付かないかまで、伸びてるんだ。前より長いから正直乾かすのめんどい。
「 駄目だろ! 乾かしとかんと、髪がグッチャになるし、傷むんだから!」
まったくもう。といいながら、晶は、櫛で、俺の髪をすいていく。
晶は、先ほどの乱暴な行動とは、裏腹に丁寧にすいてる。
スルスルとすいていった後、晶は、プリーツスカートのポケットからヘアゴムを取り出すと、耳より上の部分を纏めてくれた。
「 ほら出来た。こうすると、髪邪魔にならないだろ?」
「 うん、ありがとう。晶、手慣れてるね。」
「 まあ、一年も女の子やってれば慣れるよ。」
「 なるほど。」
晶は、一年前に、交通事故にあってサヤという女の子の体に脳移植をされた。
俺とは、別な方法で性転換してるんだ。
「 そういや、夕陽、学校どうするの? 公立と旭ヶ丘とどっちに行くのさ。」
「 うーん。制服は、どっちも着てみたいんよね。旭ヶ丘は楽しそうじゃし」
「 制服で迷ってるんだ。――やっぱり夕陽は、女の子だな。男の子の時から、カッコいい物より、可愛い物が好きだもんな。」
「 全く、カッコいい物が嫌いな訳じゃないんだけどね。」
とはいえ、晶の指摘通りだ。部屋にあるひい祖母ちゃんがくれた熊さんのぬいぐるみには、俺お手製の服が着せてある。小さな頃に、裸じゃ可哀想だと思って、服を作るのに、こっそりおばあちゃんから、裁縫を教わったんだっけ。
どうせ作るんなら、可愛いのがいいやって、ピンクの布でレースの着いたワンピースを作ったんだよな。
両親には、女の子のやるような事をするなって怒られたんだよな。律や兄貴は、庇ってくれたけど。
「 まあ、悩むのもいいけど、早く決めなよ?
「 そっか。でも勉強。」
「 そこは、林原さんにでも頼めば? いいね。彼氏に勉強教えてもらうなんて、羨ましいな。ウヒヒ。青春じゃのう。」
晶は、最後によくわからない事を言って学校に行ってしまった。
「 晶の言う通りだよな。拓人さんにお願いしよう。」
俺は、拓人さんに連絡するべく、部屋に戻ったのだった。
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