第8話 8 秘密話さなきゃ




「 頭痛い。」


朝起きたとたんに、頭に重くのし掛かるような痛み。

それは、前触れもなく訪れる俺の病気のサイン。

昨日までなんとも無くても、翌日こうやって、頭痛から始まり、高い熱が出るんだ。おまけに、あらゆる薬が効かないから厄介なんだ。

――まあ原因不明だし、ウィルスや細菌に感染した訳じゃないから、仕方ないんだけど。


俺は、ズキズキと重く痛む頭を抱えたまま、どうにか起きて、自室を出ると、リさビングに向かう。


「 父さん、頭痛い 」

「 いつものか。ほれ、こっち来てみぃ。」


ソファーに座って、朝刊をチェックしてた父さんの脇に座ると、父さんは、俺のおでこを触る。小さい子どもみたいで、ちょっと恥ずかしい。


「 ちいと ( ちょっと)熱があるの。体温計持ってくるけ、待っとけ」

「 うん 」


余談だけど、父さんは広島生まれじゃないんだけど、広島に住んでたせいか、今でも、バリバリの広島弁でしゃべるんだよね。


父さんが持ってきた体温計を、パジャマの間から差し込む。脇の父さんは、何故かよそを向いてる。


「 測ったよ。37度8分」

「 ん。この位なら寝とけば大丈夫。のう、夕陽。前から言おう思うったんじゃがの。」

「 何? 」

「 そうやって、また広げたり、不用意に服の胸元を開けたりせんの。(しないの) 母さんからも言われとるじゃろ。」

「 うん、言われてます。」


母さんや雫ちゃん、それに晶からも言われてる。けど、なかなか直んないんだ。


「 まあ、母さんから、言われとんならええわ。 それより、早よ、部屋に戻りんさい。」

「 わかっとる。」


俺は、自室へ足を向けると、父さんがもう一言付け加えてくる。


「 参考書とか読まずに、ちゃんと寝んさいよ。」

「――わかっとる。」



俺が、少しでも調子よくなったら、編入試験の勉強すると見込んで、父さんは、釘刺したんだろうけど、心配しなくても、頭痛くてそれどころじゃない。


ベッドに入り込み横になる。相変わらずずんずんと容赦なく、頭痛が襲ってくる。

眠れそうにないなと思ったけど、しばらくしたら、うとうとして、気がついたら、眠りについていた。

結局、その日は、起きたり寝たりを繰り返して過ごした。


翌日、目が覚めたんだけど、昨日より悪化した気がする。――昨日の熱くらいなら、一日寝たらよくなるはず、だけど、昨日より体は熱く感じるし、異様にダルい。


「 駄目だ。父さんか母さんに、病院に連れてってもらお。」


携帯があれば、通話して部屋に来てもらえるけど、肝心の携帯は、昨日から、リビングに置きっぱだ。


無理やり体を起こして、ベッドから這いずり出る。全身に力が入らないけど、そこは、なんとか、壁を利用して、つたい歩きする。


「 父さん。」


リビングの前にいた父さんに、声をかけたけど、そこで、俺の体は崩れ落ちた。

薄れいく意識の中、父さんが呼ぶ声が聞こえた。


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