第3話 3 大事な話



リハビリ終わったし、兄貴の診察もない。暇だし、学校休んでる分勉強が遅れるから、自己学習をしてるけど、わからない所があって俺一人じゃ思うように進まない。それでもやる事がないので、俺は、参考書や問題集を開いて勉強していた。

そこへ、病室のドアがノックされる。




「 夕陽、どう調子は?」

「 瞳子叔母さん。」


俺のお見舞いにやって来たのは、俺の叔母である音無瞳子おとなしとうこさんだ。長い髪をアップにして眼鏡をかけてる。服装はいつもパンツスーツ。だから、初対面だと生真面目で厳しい印象を与える人だ。実際は違うけど。


「 まぁまぁかな。」

「そう。突然だけど、今から出かけるわよ。」

「 えっ、今から? なんで?」

「 朝陽から頼まれたのよ。夕陽を連れて

下着とか買いに行ってほしいって。だから着替えて。一人で出来る?」

「 着替えくらいは平気。」



俺は、やりかけの数学の問題集を閉じて、服を着替えはじめた。足を怪我してるから、歩いたりは一人じゃ無理だけど、着替えるのは、どうにか出来るようになった。

パジャマを脱ぐと、Tシャツとハーフパンツに着替える。

Tシャツの上からパーカーを羽織る。俺が着るには、ちょっと大きいんだけど、体のラインが隠れるから、兄貴が着なさいって外出用にくれた物だ。



「 着替えた? じゃ行きましょうか。」


瞳子叔母さんは、持ってきてたらしい車椅子を広げて、俺が乗ると押し始めた。


「 この車椅子。もしかして、あきらの?」

「 そう。あの娘今は杖で歩けるから、家にしまっておいたの持ってきたのよ。」

「ふーん。」


今、俺と叔母さんの話してる晶というのは、叔母さんの末の娘。つまり俺の従姉妹だ。俺と同い年だけど、晶の方が一ヶ月先に生まれたから、あっちのがお姉さんだったりする。



叔母さんと俺は、下まで降りると、そのまま病院のロビーを抜けて、病院の前にあるスーパーに入って行く。

このスーパーは、食品から衣料品や子供のおもちゃまで扱ってる大型スーパーだ。ここらのお店だと、一番大きいから、週末親子連れやカップルでにぎわうんだ。


入口から入ると、エレベーターで三階にある下着売り場に向かった。


「 ほぇー、なんか凄いねぇ。」


今まで、女性の下着売り場をまじまじと見るのは、いけない気がしてよく見た事ないから、思わず間抜けな声が出てしまう。色々な色彩が目に飛びこんでくる。

奥に目をやったら、地味な色彩も目につくけど、デザインからして多分ご年配のご婦人向けだと思う。


「 さてと、子ども向けの下着はあっちね。」



瞳子叔母さんは、そう呟きながら、下着売り場を巡る。

途中店員さんを見つけて、店員さんに俺のサイズを測ってもらった。


「 うーん。色々あるね。」


俺は、陳列してある物一つ一つ手に取って、見る。

ブラジャーって言っても、ホックのない頭からがぶって付けるタイプで、形はキャミソールやタンクトップを半分にしたみたいなのや、ブラジャーの形に近い物もある。色も白とか淡いブルーとかだし。


「 とりあえず学校用をいくつかね。夕陽の通う予定の学校の校則じゃ、下着は白以外駄目だからね。」

「ほうなん。( そうなの)じゃ、このリボンの付いたのにする。」


俺は、真ん中に小さなリボンが付いてるブラジャーを取った。


「 そう。じゃ試着しなきゃね」

「 うぇー」


そのあと、俺は、叔母さんに連れられるまま、下着を数着。服を何着か購入した。

今日一日つれ回されて、ちょっと疲れたよ。


戻ってきた病院の食堂で、チューチュージュースをすすりながらそう思った。

一つの物を買うのにいくつも候補を見せられて選ぶのが大変だった。しかも、叔母さんの可愛い連発してたから、耳にタコが出来た気がする。


「 夕陽、大事な話があるの。」

「何?」


正面に座った叔母さんが、真剣な顔で話を進めた。


「 あのね。朝陽と話し合いしたんだけど、うちの養女にならない?」

「 えっ?」


叔母さんの唐突な申し出に、俺は唖然としたのだった。


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