第10話 10 秘密とお願い事
ドアをノックする音で、ウトウトしてた俺は、目が覚めて、あわてて「 どうぞ」と、入室を許可した。
「 夕陽、どう?」
「 拓人さん?」
拓人さんが入ってきた。学校の帰りなのか制服姿だ。 なんか難しい顔してるし、なんで? その理由はすぐにわかった。
拓人さんの後ろから、背の高いセーラー服姿の女の子が入ってきた。
彼女の名前は服部ひな。肩まで伸ばした髪と猫のようなつり目が特徴の女の子だ。ひなちゃんは、俺や仁とは、はとこになるんだ。
それはそうと、腑に落ちない事が一つあるんだけど。
「 ……なんで、ひなちゃん拓人さんと来たん?」
思ったより発した自分の声が低い。
――噂きく女の嫉妬心ってやつかな? 恐ろしい。やっぱり、俺も女の子なんだな。
俺の気持ちに気付いたのか、ひなちゃんは、若干引きつつ、答えくれた。
「 一緒になったんは、たまたま。お見舞いに私が来たのは、瞳子さんのお願い」
「 ならいいけど」
俺が理由を納得しかけたら、拓人さんが、ツッコミを入れてきた。
「 あれは、お願いじゃなくて、命令って言わない?」
「 そうとも言う。だけど、『 お見舞いに行ってきなさい』って言われたとしても、瞳子さんの『お願い』なんよね。ああいう時の瞳子さんは、なんか企んどるもしくは、私や林原くんにどうしても頼みたい事がある――じゃろ? 夕陽」
「 そう、うん 」
鋭いなー。母さんの回りくどいお願いなのに、ズバリと当ててくるなんて。
俺は話する為に、体を起こした。
「 あんね、拓人さん。俺からのお願いにも、関わる事なんじゃけどね。俺の秘密聞いてほしいんじゃけど、いい?」
「 いいけど。」
拓人さんは、チラリとひなちゃんの方を見てる。席外してくれないかなって雰囲気だ。
ひなちゃんは、それを察したのか、外で待ってると告げると出ていってしまった。
「 俺って、元男なんよね」
「 ……どういう事?」
俺は、ゆっくり少しずつ自分の過去を話した。
自分の祖先の事。自分にかけられた魔法によって、あそこを作り替えられてた事。実の兄が手術して、女の子に戻った事を話した。
「 そっか。夕陽が俺って言う理由もわかったよ。」
「 あっねぇ、今更だけど、俺の事気持ち悪いとか思わんの?」
「 別に、女の子から男の子になってたのは、夕陽のせいじゃないし。驚きはしても、気持ち悪いとか思わないな」
「 なら安心した」
「 で、お願いって何?」
「 あっ忘れるとこだった」
拓人さんに言われるまで、肝心のお願いの事忘れるとこだったよ。
「 俺の病気について、調べたいんじゃけどね、俺が生まれた家 平原の本家に祖先が残したっていう魔法に関する手記があるんじゃけど、その手記があるとこには、曾祖母ちゃん達のコレクションの山の中なん。いっしょに探してほしいんよ、駄目?」
「 僕は、かまわないけど。赤の他人が行っても大丈夫なの?」
「 それは」
「 それは大丈夫! 平原の本家を管理してんの夕陽のお兄さんの朝陽さんだし。」
俺が大丈夫って言う前に、ひなちゃんが答えちゃったし。て言うか、いつの間にひなちゃん戻ってきたの?
まさか今までの話聞かれてた?
「 ごめん、夕陽が林原くんに、お願いしてるとこから、聞いちゃった」
「 あっそうなん。」
呆れて怒る気にもならない。大体、ひなちゃんに怒る事自体無意味だ。
兄貴同様、よく言えばマイペース。仁の言葉を借りるなら、
拓人さんも苦笑いしてるとこ見ると、ひなちゃんのむちゃくちゃブリに慣れてるみたいだ。
「 その手記だけど、恐らく異世界の言語で書いてあるだろうから、二人きりになりたいであろう、林原くんには申し訳ないけど、私もついて行くね。その代わり、宿は、私の実家だし、平原の本家までなら、うちの兄さん引っ張りだせば、車で連れてってもらえるし。」
「 その辺は、服部さんや夕陽に任せるよ」
「わかった」
平原の本家に行くのは、二人の期末試験や俺の編入試験が終わったあと。つまり夏休みの初め頃になりそうだ。
------------------------- 第11部分開始 ------------
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