概要
視線が交わされることはなく。けれど僕らは、夢でまた巡り合う。
大学二年目の春。目標を見失った僕の夢の中に、一人の女性が現れる。
『あなたの視覚を、貸していただけませんか』
彼女は、僕にそう告げた。
それが、僕らの奇妙な関係の、始まりだった。
『あなたの視覚を、貸していただけませんか』
彼女は、僕にそう告げた。
それが、僕らの奇妙な関係の、始まりだった。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★ Very Good!!めぐる季節に芽吹く花のような、葛藤と再生の物語
時間をかけて季節はめぐります。
春に咲いた花はやがて散り、夏には青々と葉を茂らせ、秋には色づいた葉を落として、冬の寒さを乗り越える。そうしてまた春が来れば蕾をつける。老いた草木は種を飛ばして、その種は遠いべつの場所で芽吹きます。二度と来ない季節はないし、二度と咲かない花はありません。
人間もおなじなのかもしれません。たとえ失意の底でもだえようとも、かならず再生の時は来る。
大事なのは、「向き合おうとしているか」です。「見つめようとしているか」なのです。未来と向き合う、未来を見つめることをためらっていた主人公・トオルのもとに、視覚的に視ることのできない彼女が現れたのは、ある意味必然だったのか…続きを読む - ★★ Very Good!!何度でも巡り合って
「『やりたいこと』を聞かれたときに答えられない」。
1話から刺ささるんですよね。主人公のトオルさんは留年してしまった自堕落な大学生。「大抵の人は、上手く折り合いをつけて、単位だけを取」ることができた、だけど僕はできなかった――。
そんなトオルさんが、夢の中で出会ったのは、目が見えない少女。彼女にはどうしても見たいものがあるらしいけれど……。
さて、この物語は、大きく分けて、夢の中での彼女との会話パートと、交渉の結果視力を一時的に失ったトオルさんの日常生活パートに分けられます。
彼女との会話パートでは、どこか聡明な雰囲気のする毒舌な彼女と完全に尻に敷かれている情けなくもそれだけではない…続きを読む