白い鳩 VS ラスティア・ベルバラート
ラスティアのテンションは今、この大会に参加してからの期間で最底辺にある。
つまりやる気が全く起きないでいた。
「鳩て」
眼の前に居る対戦相手は鳩。
ここまでの戦い、特に前の試合で本性を表した白い鳩ではあるが。とはいえ基本は只の鳩。
今もラスティアをガン無視して歩いたり毛づくろったりしている、自分のことなどまるで相手にもしていない。
面白そうだから、いい遊び相手がいるのを期待してきたのにこの有様。
最初が少女で二回目が鳩。
他の試合には期待していたようなまともな戦士がいるというのに、自分の相手はこれとはどういうことだ。なにか悪意でもあるのか!
「……帰ろっかな」
王はすっかり意気消沈である。
頑張れ王!負けるな王!やれば出来る王!
……結果はもう決まっているとかは言ってはいけない。
相も変わらず客はぼうっと見ているだけで盛り上がりの欠片もない。
これには王も苦笑い。
ちなみにポちのお陰で戦意喪失にはなっていない。やる気が無いのは只管に本人の問題である。これには作者が苦笑い。少しはやる気出してくだされ。
「王ー!頑張って下さーい!」
「やる気を出してくださいラスティア様!話が進みません!」
「ああー。そうだった応援に来るって言ってたっけ、でもなー。どうしようかなー」
「このまま退場は流石にかっこ悪いですよ!ラスティア様、少しは良い所が見たいです!……ほらヘレナも」
「ラスティア様のー、ちょっといいとこ見てみたいー!」
「……そうかー。じゃあちょっとぐらい頑張るかなぁ」
何とかやる気になっていただいたラスティア様。この調子です王様!
そして歩いて鳩に向かう。普通の攻撃は効かないようだが、さてはて。
鳩の力を無効化しつつ体温を百度ちょっとに設定する。IHヒーターも真っ青の温度管理能力だ、これでは鳩もこんがり良い色に成り兼ねない。
「よーしよし、いい子……じゃない良い鳩。おいでー」
熱源が呼び込んでも来るわけがない。とてとて逃げ回る鳩を中腰のオジサン(お兄さん)が追いかけ回す。
昼間の駅前のような光景が会場で繰り広げられ、それを観客が真顔で見る。
拙いぞ、会場は恐怖のズンドコに陥ってしまった。
これでは平和は訪れない、頑張れ鳩。平和は君の手(羽?)に掛かっている!
*** *** ***
ラスティアが鳩と戯れて約10分。会場はポカーンとしている中、ラスティアは
「あれ?これ少しまじめにやらないとヤバくね?」
という感情が芽生えていた。
さすがに(絵面的に)ヤバイと思ったラスティアは鳩を追いかけるのをやめ、少し距離をとった。すると鳩も走るのをやめた。
そして、手の温度を100℃から−60℃まで下げ、ゆっくりと近づく。
実況:「おっと、ラスティア選手、ついにやる気になったかぁーー⁉︎」
ラスティアはゆっくりと着実に距離を詰めていく。そして、その冷たい手で鳩に触ろうとした。ちょっとした殺意と共に。
すると鳩は小さい姿から光輝く大きな鳥の姿になった。
ラスティア:「わぁー。やっぱり2人に聞いた通りだ。ほんの少しの邪気に反応するってホントだね。」
…………この王様、故意でやったのか?
ラスティアが鳩に興味を示しているといきなり白い炎で攻撃してきた。
実況:「鳩選手、いきなり白い炎でラスティア選手を攻撃したぞーー!!」
解説:「確かあの炎はキリシマ選手にも使ってましたね。ラスティア選手もここでダウンかと思われます。」
会場が少し盛り上がって来た所で勝負ありと誰もが思った。しかし
ラスティア:「…………意外と何にもないんだね、この炎。」
白い炎を浴びてなお立っているラスティアを見た観客は歓声を上げた。
ラスティア:「まぁ、多分普通の攻撃は効かないしなぁ……よし仕方ない。持ってくれよ、僕の体力。ポち、出ておいで。」
するとラスティアの足元に青色の体毛の狼が突然現れた。そしてその狼は後脚、前脚に鎧みたいなのをつけている。大きさはニホンオオカミより少し大きいくらいの大きさだ。
ラスティア:「おー、よしよし。いい子いい子。」
ポち:「クゥ〜ン♪」
ラスティアは狼の頭を撫でている。
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“ポち”
種族:思念体・冥狼フェンリル
詳細
ラスティアの
このフェンリルは人に懐くことはあまりないが、懐いたら最後主人が死ぬまで従い続けるぞ!ちなみに普通の人がこいつに力を貸してもらう時は持って30秒だ!しかしこの王様は5分待つぞ!こいつもこいつでバケモンかよ!!
あと貸し終わった後遺症として全身麻痺(激痛持ち)に能力の損失だ。2つとも一時的なものだが強敵相手だとほぼ即死確定だな。ラスティアは麻痺を筋肉痛と肉離れだと勘違いしてる。ただし、口は普通に動く。
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ラスティア:「いいかい、ポち。君の遊び相手はあの大きな鳥さんだ。久しぶりの外だ。思いっきり遊んで来ていいからね。」
ポち:「アンッ!」
するとポちは鳩に向かって飛ぶと一瞬姿が消えた。
そして、姿が見えた瞬間鳩の大きな体がぐらついた。鳩の光輝く体には大きな爪痕が付いている。
実況:「な、なんと突然現れた青色の狼が消えたと思うと今度は今大会一切の攻撃を寄せ付けなかった鳩選手が攻撃をくらっているぅ!!」
解説:「……動体視力に定評がある私も、あの狼の動きは見えませんでしたよ。あれがラスティア選手の奥の手と言った所でしょうか。」
それは初めて聞きましたと実況がツッコミを入れる。
そんな事より、初めて鳩に攻撃を与えた事で観客は大いに盛り上がっていた。
その中でも倒せんじゃね?とかいう言葉が多い。
しかし、ラスティアは観客の盛り上がりとは別に怪訝そうな顔をしていた。もちろん見えないように。
ラスティア:(正直ポちを出すのは賭けなんだよねぇ。貸すと、遊ばせるじゃかなり違うし。)
鳩は向かってくるポちに対し白い炎を浴びさせるが……効果がない。
ラスティア:(無理だよ、鳩さん。ポちは幻みたいなものだからね。触れるのは僕と僕に親しい人たちだけさ。それにポちの攻撃は攻撃のみが実体化されるからね。ポちより遅かったら避けられないよ。)
ラスティアは解説口調になっている。なんだこいつ?
王様は座ってポちを見守っている。
ポちはというと……無邪気に鳩と戯れている……のか?
ポち:(あれでまだ遊んでるんだからなぁ〜。怖いものだ。僕も危うく死にかけたし。)
ポちは鳩を追い詰める。鳩もこれは想定してなかったのだろう。何もできずに無抵抗だ。
ラスティア:「よーし、この調子で」
ドクンッ
ラスティア:「あれ、もしかしてもう時間切れ?なん……ハッ!そう言えば」
〜試合当日の朝〜
ラスティア:「ほらポち、かかって来なさい!」
ポち:「アンッ!!」
〜現在〜
ラスティア:「そうだった、今朝ウォーミングアップついでに遊んだの忘れてた。はぁ、慣れないことはするもんじゃないよ…全く。」
ラスティアはその場に顔面から倒れ込み、その場にいたポちまで消えた。
実況:「おーっと、ラスティア選手。顔面から倒れ込んだぞ!痛そうだ!」
解説:「そうですね。痛そうはともかく、あの狼も消えてしまいました。どうやら何かしらのデメリットがあったようですねぇ。」
その後審判がラスティアに近づく。ラスティアはうつ伏せになった状態で
ラスティア:「す、すみません。降参でいいですか?試合終了まで動けないので。」
と自ら降参を申し出た。
それを聞いた審判はラスティアの降参を認め、鳩の勝利が確定した。
*** *** ***
ラスティア・ベルバラートの後日譚はこちらから!
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