【千古 星児】(鮎川剛様)
【トーナメントは格好の捕獲スポット】
https://kakuyomu.jp/works/1177354054883905362
「なあ、聞いたか?」
「聞いたって、何をだ?」
「トーナメントだよ、トーナメント! 優勝すれば何でも願いが叶うっていう、最近噂になっているあれだ!」
「そのことか……千古、いつも言っていることだが、お前の言うことには主語が無い。ちゃんと主語を言え」
「そうですよ。特に誰かさんは主語が無いと会話に参加することさえ出来ませんからね」
「何だと!? この頭でっかち! 戦いも出来ないくせに偉そうに!」頭脳派の
「別に誰とは言ってませんよ、この脳筋」
「よっしゃ、分かった! そんなに喧嘩してえなら相手になってやる!」
「二人ともやめないか! 幹部ともあろうものがみっともない」
「フン、ボスが言うんじゃ仕方ねえ。今日はこの辺にしといてやるよ」
「……失礼、お見苦しい物をお見せしました」
塩川が一喝すると、二人の幹部は口をつぐんだ。
「さて、それで? トーナメントがどうしたんだ?」短く咳払いをして、塩川が本題に戻る。
「勝ち抜けば願いが叶うトーナメント。参加しない道理なんてないだろう?」
「なるほど! そのトーナメントで優勝して、怪人と戦闘員を揃えてもらうんだな?」
「いやいや、何でも叶うなら、いきなり世界征服させてもらうべきでしょう」昴の答えに、久羽が呆れた調子で返す。
「確かにそうだが……それなら尚更、俺の出番ってもんだろ」
「いや、ここは私が出る」
千古が言い放った言葉に、その場にいた全員が一瞬、戸惑いの色を見せた。
「千古が、か? 一体どうして?」
「そうですよ。荒事なら、もっと適役な方がいらっしゃるんですから」
「そうだぞ! 戦いの場なのに、なんで俺に任せねえ?」
三人がそれぞれの口調で、質問を浴びせかける。千古は誇らしげに答えた。
「考えてみるといい。トーナメントの参加者はどんな人間だと思う?」
「そりゃ……俺みたいな、腕に覚えのある奴だろ」
「そう、それだよ。こういったイベントには、各地から猛者たちが集まる。勝ち上がっていく過程で彼らを怪人や戦闘員に改造、洗脳すれば、途中で負けても人員の確保が出来るし、あわよくば無敵の大軍団を従えた上で世界の覇権まで手に入るという寸法さ」
「なるほど! 頭いいな!」そして、その答えに昴が同調した。
「……いや、初戦で負ければ、何も得られないはずですが?」
「止めても無駄だ。こうなったらあいつはどこまでも突っ走る」
久羽の冷静な意見も、千古と昴には届かない。それを知っている塩川が、久羽を制止した。
「はあ……あなたも変わってますね。千古さんの性格を知りながら首領を買って出るだなんて」
「私より先にこの組織に居た癖に、どの口が言うんだ? 作戦参謀」
「呼びもしないのに押しかけて来たどこかの脳筋よりはマシですよ」
「まあ、私たちは見守るとしよう。後ろで構えておくのが、首領と作戦参謀の務めというものだろう」
「まったく、先が思いやられますね……」
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