ラスティア・ベルバラート VS 桜 愛梨菜

ラスティア:(いやー、困った困った。最強決定戦トーナメントというものだから筋骨隆々な人たちがいると思ったら最初の相手がこんな小さい女の子なんて。あー、こんな事ならちゃんと他の人の試合とか出場者とか確認してれば良かった。)

※うちの王様は面倒くさがりなので受付したらすぐホテルに直行して寝てました。


はぁ、とラスティアはため息をついた。


愛梨菜:「おじさん、げんきないけどだいじょうぶ?」


やる気のなさを越えて対戦相手に心配されるという始末である。

そんなことは耳に入ってないのか眠そうな顔でチラッと後ろを見る。


ラスティア:(ゲードまで10mか。めんどいからこのまま何も言わずに棄権しちゃおうかな。)


何とこの王様、始まって2分も経たないうちに“棄権”という行動を実行しようとしているのだ。さすが今大会一やる気のない男(多分)。ここまでいくと清々しいくらいだ。


実況の人:「両者どちらも動きませんね。」


解説の人:「えぇ。ですが、ラスティア選手はチラッとゲートの方に目をやりましたね。」


実況の人:「えっとつまり?」


解説の人:「棄権、しようとしたのではないでしょうか。」


すると会場内に少しの沈黙が走り、少しして


観客:「ふざけるな!ちゃんと戦え!」


などの怒りの声が次々と聞こえて来た。


その瞬間ラスティアは


プツンッ(何かが切れる音)


キレた。


キレた瞬間、体から怒気と熱量操作の高熱が体から漏れ出した。

彼の内にある感情は棄権できない虚しさと棄権しようとしていると告げた解説への途方もない怒りである。


ラスティア:「あの解説、終わったら殺す・・・。影も残さずモヤシテヤル!」


下を向きながらボソボソと呟く。今の彼はとてもお見せできない顔になっている。これが小説で良かったと心から思う。

てか、この王様がキレる事はとても珍しいことである。よっぽど逃げ出したかったのだろう。


愛梨菜:「だ、だいじょ」


ラスティア:「大丈夫だよ、お嬢さん。」


顔は笑顔を作っているが隠しきれない怒気と高熱で余計怖く感じる。てか、怖い。動物なら本能的な何かで距離を取るぐらい怖い。


実況の人:「おっと!ラスティア選手の体から炎が飛び出た!いきなり決めるのかー⁉︎」


んなわけ無いだろうと連れの2人が呆れて聞いていた。


キレた頭を何とか落ち着かせ、ラスティアは状況を確認した。


ラスティア:(相手は女の子、しかも子供だ。殺すのは簡単さ。でもそれをしたらまた観客からヤジが来る。棄権は・・・あの解説のせいで無理。・・・あれ?これどっちに転んでも詰んでない?)


そう、彼女を殺してもヤジが来て、棄権しても非難の嵐。どうあがいても絶望とはまさにこの事である。


ラスティア:(考えろ。ない頭使って考えるんろ!)


彼の顔には珍しく焦りの色が見えていた




*** *** ***




ラスティアが仕掛けてきそうな雰囲気だったのに、突然、何やら考え事を仕出した。


(対戦相手の前で、考え事とは随分余裕だなー。今のうちに………。)


そう思った愛梨菜はなんでもBOXに手を入れた。

そして、愛梨菜が取り出したのは爆弾とライターだった。


(アニメのお約束よね!この爆弾ボムさえあれば、あの大きなおじさんでもすぐ倒せるはず。)


カチッ。

導火線に火を点ける。

3……2……1………っ!!


「えいっ!」


愛梨菜がラスティアに向かって爆弾を投げた。


次の瞬間、ラスティアの目前で爆発し、もくもくと物凄い量の煙が出てきた。

あっという間にフィールドは煙に覆われ、辺りは何も見えなくなった。

観客は煙が晴れるのを今か今かと待ち構えていた。


(これだと、おじさんが死んだかどうか、分からないじゃん!まあ、死んだとは思うけど…。)


「おおっと。これは、まさか!?愛梨菜ちゃんが優勢のまま勝利か!?そして、勝つためなら手段を選ばない愛梨菜ちゃん、エゲツない!!」



ほとんどの人が愛梨菜の勝ちを確信した時。



霧の中から無傷のラスティアが現れた。


(何で!?確かに爆発したはず。何で無傷なの!?)


「おお!!まさかの展開です!!爆発をものともせず、無傷で出て来ました!!どうやったのでしょうか!?」


「ただ、『熱量操作』を使って、自分の温度を爆弾が爆発した時の温度と同じにしただけだ。」


(はぁっ!?そんなの知らないし!チートじゃん。どうしたら勝てるの!?そうだ……あのおじさんの弱点をつけば…。)


「ねえねえ、おじさん。 おじさんは、おうさまでしょ? たいかいにでていいの? はやくもどらないといけないとおもうよ?」


「うっ。まあそれはそうなのだが…。リーグレッドのお墨付きだし、大丈夫なはず……(多分)。」


ラスティアが自分自身に言い聞かせるようにして言い訳していると、ラスティアの連れの男が観客席の中ほどから、最前列に走ってきた。


「ラスティア様!相手を場外にしたら、殺さなくてすみます!早くこちらに!」


「なるほど、その手があったか!今行く、アーデン!」


ラスティアは連れの男に返事をすると、愛梨菜の方へ、向き直った。


「大丈夫だよ、お嬢さん。お嬢さんが気になるようなら、直ぐに終わらせてさしあげよう。では少し失礼、お嬢さん。」


「わっ。」


愛梨菜が軽々とお姫様抱っこされる。


(何とかしないと、このままじゃ、場外負けだ!なんでもBOXを使おう!)


愛梨菜はなんでもBOXに手を入れ、剣を出そうと、手をなんでもBOXから出した。


その手には、何も握られていなかった。


(なんで!?なんで剣出ないの!?)


「お嬢さん。無駄な事だよ。何も出なかっただろう?その理由を教えてさしあげよう。さっきの爆弾とライターで使用回数の上限に達したんだ。つまり、なんでもBOXを100回使いきってしまったということだよ。さて。この大会はここまでだ。さらばだ、お嬢さん。」


ラスティアはそう言って、連れの男アーデンに愛梨菜を渡した。


「試合終了!桜 愛梨菜選手、場外。よって勝者、ラスティア・ベルバラート!」




*** *** ***




桜 愛梨菜の後日譚はこちらから!

https://kakuyomu.jp/works/1177354054883958334

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る