【夢見】(亀麦茶様)

【ロングスリーパー】

https://kakuyomu.jp/works/1177354054883899165


 ロングスリーパーをご存じだろうか?何か特殊能力を持った者──ではなく、只ただ眠る時間が長い普通の人間である。

 ロングスリーパーは6時間以上の睡眠を必要とする人で、その中でも10時間以上の睡眠を必要とする人は超ロングスリーパーと呼ばれる。超ロングスリーパーに当たる人は成人の1パーセント未満でしかないのだ。

 そんな僅かな1パーセントの1人、夢見はロングスリーパーであり、不思議な青年だった。

 夢見の睡眠時間は長いので、長い夢を見るのも当然なのだが、不思議なことに、夢見が見た夢は、他人が見た夢と同じであるのだ。いや、正確には他人が見るはずの夢を先に見るという、夢の先取りをやってのけてしまうのだ。


 そんな夢見さんは今日も夢を見る。


 ◇ ◇ ◇


 眠い。

 とてつもなく眠い。

 この電車の揺れというのは、まったく人の眠りを誘うなあ。しっかりしないと。家はもう近くだ。

『次は───』


 瞼まぶたを閉じると体が何か温かいものに包まれた様な、そんな気分になる。暗い海を泳いでいる感覚だが、ある時何も動かなくなる。ふと耳を澄ますと、遠くから音が聞こえる。



 「───ーい。おーい。兄ちゃん大丈夫か?」

 誰かが声を掛けている。目を開けると、そこには一人のおじさんとたくさんの人が居た。背の高い人、低い人。武器を持っている人、本を持っている人。動物の頭の人もいた。

 「ここはいったいどこですか?」

 「兄ちゃん、トーナメント参加者だろ。参加届け出しといてやったから、行ってきな。」

 取り敢えずドームの中に入ると、そこには人、人、人。たくさんの観客で溢れていた。余りの人の多さに呆然とする。

 すると突然ドーム中央部に設置されている巨大スピーカーからアナウンスが流れた。

 『トーナメントを開始します!』

 盛り上がる観客たち。


 よく分からないけど。トーナメントってのに勝てばいいんだな。負ける気しかしないけど。でも。

 「なんだろう、この気持ちは。」

 高揚感が体を包んでいくのを感じた。

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