例えば、顔にご飯粒が付いている人がいたとして、僕はその人と、面と向かって話をしているとする。僕はご飯粒が気になってそれをボンヤリ見てしまう。

 相手はご飯粒を見ている僕に気づき、顔になにか付いているのかな、と、やっと自分の顔に付いたご飯粒に気づく。ご飯粒がどこに付いていようと、例え、相手の眉間にポツンと付いていて、相手の目を見ながら喋っているのと同じ状態であっても、相手はご飯粒に気づく。と気づく。

 さて、昔ある人が、相手の鼻をボンヤリ見ながら喋ると緊張感を与えない、みたいな事を得意気に話していたから、僕はそれからというもの、相手の鼻をボンヤリ見て喋るようにしていた。

 すると、どうだろう。ある日、話している最中にいきなり女性が激怒した。

 その女性は、鼻を整形していた。相手からすれば、僕が、整形した鼻をずっと凝視しているように見えたらしい。僕はそれきり、相手の鼻を見て喋るのをやめた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る