君は繋ぐ手を優しくほどいた(H3BO3)
「おお、星がたくさん! ∪ちゃん越しに見る夜空もオツなもんですねえ。ウヒヒ」
彼女は呑気に笑っていた。僕も笑って返事をしてあげたかったけれど、それどころではなかった。突然、叫びにも似た軋む音を響かせながら、僕たちの居た橋が崩れたのだ。
僕は崩れた橋の端で右手を伸ばし、真っ逆さまに落ちていく彼女の細い手首をがむしゃらに掴んだ。
ブラブラと宙に浮いている彼女はまたも呑気な声を上げる。「ファイト一発だよお、∪ちゃん!」
僕は返事の代りに、ギイとかグウとかいう音を奥歯の隙間から出して、全身全霊の力で持って彼女を引っ張るのだが一向に上がってこない。
「真剣な顔の∪ちゃんも格好良いなあ。本当に。私は幸せ者だったよなあ。こんな格好良くて頼りになる彼氏ができて。だからさ、ウン、大丈夫! 私は後悔しないから。だから∪ちゃんも、ね? エヘヘ……――」
そういって彼女は、繋いだ僕の手を思い切りつねった。
◇ ◇ ◇
※「ほおずき」さんの「三題噺企画 H3BO3」に、後追いする形ですが参加させて頂きました。(第一回「繋ぐ、夜空、橋」)
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