ノスタルジー199X

 一九九〇年代って、今思えば面白かったよなあ。

 大人用の自転車に無理矢理跨って、座るとペダルを上手く漕げなくなるからずっと立ち漕ぎしてさあ……、歩道をビュンビュンと走るんだ。

 町がでっかくてさあ。どこまでも道が続いてるように感じたよな。

 本屋に行くと「大予言コーナー」ってのがあってさあ。表紙にノストラダムスの写真が載った本がズラリと並んでて、大人がそれを真剣に読んでいるんだ。

 テレビでも雑誌でも世界の終末を特集して、皆が口を開けば予言だ、終末だって言ってさ。

 だからかなあ……、あの頃って皆がボンヤリと死を想像していた気がする。無駄に優しくて、笑い声は大きくてさあ。

 俺は嫌いじゃなかったけどなあ、あの雰囲気。そりゃひどい犯罪もあったし、綺麗事ばかりじゃ無かったけれど……なんとなく、気持ちが一つっていうかさあ。皆まとまっていた気がするんだよなあ。

 どうしてこうなっちゃったのかなあ。本当に。

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