４００字掌編集 ～ごった 煮ーあ to Novel～

自殺志願者の心情

　自殺したいと胸を張って話す女性がいた。ワタシは病気だから云々、毎日◯◯（薬の名前）を飲んでいる云々、と、やたら詳しく説明された。

　僕はどうにも面倒くさくなって、真面目な顔を作って彼女に語り聞かせた。

「これはね、心理学者も認めた、生まれ変わりたいという願望を持つ人に効果的な精神療法の一つなんだけどね。気持ちがひどく沈んでしまった時、全身の体毛を隈なく剃ると良いらしいよ。髪の毛や眉毛はおいておくにしても、それ以外の全部さ。なんだか生まれ変わった気持ちになるらしい」

　全くのデタラメだったのだけれど、それから僕も手伝いながら、彼女は全身をツルツルに剃った。髪の毛と眉毛以外、全てだ。もちろん、大真面目に、粛々と。

「ホントだ。なんだか清々しくて、今までのワタシと違う気がする」

　彼女はとても喜び、そして、自殺したいと言わなくなった。ああ、良かった。