ザマスザマス詐欺

 電話に出ると、甲高い女の声が聞こえた。

「あら、あなた。わたしザマス。今◯◯さんの奥さんとお茶会しているのザマスけれど、わたしお財布を忘れてしまったみたいで。悪いのだけれど、◯◯まで届けて頂けないザマスか?」

 語尾にザマスと付ける女など妻しか見た事がないもんだから、私はそれをてっきり妻だと信じ込んでしまって、慌てて財布を引っ掴み、◯◯へと急いだ。

 ◯◯に着いてみると、見たことのない女が大勢いて、皆がザマスザマスとけたたましく喋っていた。

 私はそこではたと気付いた。そういえば何年も、仕事にかまけて妻の顔をろくに見ること無く過ごしていた。

 妻はどんな顔をしていたっけ。どこにいるのだろう。わからない。

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