闇と救い
わたしは彼にどう思って欲しいのだろう。
二人でいると妙に心がざわめき立つ。彼にわたしだけを見てほしくて、同情してもらえるような弱音を吐く。これ見よがしに処方箋の袋を目立つ位置に置いて、まるでそれがアイデンティティーであるかのように死について語った。
彼は黙って話を聞いていたかと思うと、タバコに火をつけ、わたしに「よく見ていろ」と言い、突然自分の手の甲にタバコの火を押し付けた。
わたしは慌てて彼の手の甲にコップの中の飲み物をひっかけた。
「おい、熱そうに見えるか? 痛そうに見えるか? 死にたい死にたいと口に出すのは自由だけどよ。その言葉が周りにどれだけ重くのしかかっているか、これで分かったか。お前の言葉は、この手の甲みたいに相手に痛みを押し付けてんだよ」
彼は口調とは裏腹に、とても優しい目をしてそう言った。
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