語り部を失った会話劇

あるボロ小屋の中で、魔女と少女



「やっと起きたかね、小娘……調子は?」


「あ、あなたは?」


「私が誰かなんてどうでも良いさ。それよりも体調はどうだい、良くなったかね?」


「は、はい……あれ、私は」


「三日間も眠るもんだから、失敗したと思ったがね、目を覚ましてくれて良かったさ。腹も減ってるだろ? とりあえず食卓の上に食事は置いている。これで私の役目は終わりだ。後は一人で頑張りな」


「あっ、あの、私、確か病気で……血を吐いて」


「あぁ、面倒だったよ。まぁあんだけ汚れてちゃ、目覚めが悪いだろうと思ってさ、どうせあんたの病気が治るか確かめるまでは暇でね。ついでに綺麗にしといたよ」


「わわ、私の病気を、治してくれたんですか?」


「半分は私だがね、お礼ならネズミに言いな。心当たりぐらいあるだろう」


「ピーター……の事?」


「ピーターって言うのかい。まぁ、そいつがネズミなら、間違い無いだろうね。あんたの病気が治ったのは、あいつのおかげさ。墓でも作ってやるんだね」


「墓って……どういう事ですか?」


「死んだよ。あんたを助けるためにね。それだけだ」


「死んだって……どういう事ですか?」


「そのままの意味さ。もうあいつは居ない。あんたを助ける為に、死んだのさ」


「どうして……どうして私を……助ける為に……ピーターが死ぬの?」


「泣くな、面倒な小娘だね」


「ピーターはどこにいるのっ?」


「五月蠅いねっ、あんたを助けるために、私が殺したのさ。あいつに頼まれてねっ」


「意味が分からないわっ、ピーターはどこに居るのっ」


「死んだと言ってるだろっ、小娘っ。泣いてる暇があったら飯でも食うんだっ。頭の悪いガキだね、まったく」


「ピーターを返してっ。私はっ……まだ何も、伝えてない」


「じゃあ私は帰らせて貰うよ。ネズミとの約束は守った。ちゃんと墓を作ったら伝えといてくれ」


「ピーター……お願い……戻ってきて……お願い……ごめんなさい……ピーター」


「あぁ、最後にあいつからの伝言だ。生きていれば、幸せになれる。頑張れ、だとさ。お前がそのまま泣き続けて死にたいなら、そうしてな。とりあえず、私は伝えた。じゃあ、帰らせて貰う」


「ピーター……お願い」


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