第13話「戦闘準備その2」


 ペガスはディーナと言うチート装置のおかげでドンドン姿形が変わっていった。

 ウイングが追加されたり、三連装砲の砲塔が出来たり、レーザー迎撃装置が出来たり、艦の先端に主砲を搭載したり、ミサイル発射管なども増設した。

  

 元々ペガズ事態は長い楔形の形状、メタな発言ならトッ○を狙えのヱクセ○オンみたいな船体から不思議の海のナ○ィアに出て来るNーノーチラ○号風の船体に改良され、武装面も両方のモデルとなった艦の武装を組み込んで更に宇宙戦艦ヤマ○の武装まで組み込んでいた。


 アームド・セイバーにも手が加えられている。

 まずリリィはビーム砲付きの黒いウイングパーツが付けられ、シールドも搭載された。

 頭部を挟み込むようにビーム機銃、そして両腰部分にキャノンユニットが増設された。

 

 更に惑星セインの主力アームド・セイバー、フラウも基本設計を見直された。

 ジェムと比べると急造的な部分が多いためだ。

 それを地球の――サブカル知識を思う存分ぶっ込んで改良した。

 その結果、大幅な性能向上が見込まれ、今はセイン人達による慣熟訓練中だがかなり苦労している。


 ベアルファイターも同じである。

 火力も装甲強度も巡洋艦並と言う化け物になり、最高速度もマッハ十以上になっている。

 

 ちなみに地球の戦闘機、自衛隊のFー15でも最高時速はマッハ2.5(時速換算で約2500km)である。

 慣性制御システムとか装着者自身にパワードスーツ着せないと、マトモに操縦不可能なレベルだ。

 ユーイチはもう自重と言う言葉を忘れてしまったらしい。 

 ベアルファイターの操縦者であるベアル人はヒイヒイ言いながら慣熟訓練に励んでいる。


 ちなみにどうして「ベアルファイター」と言う、ベアル人専用の宇宙戦闘機なのかと言うと単純にベアル人の体型がアームド・セイバーのコクピットに合わなかったのと、アームド・セイバーを惑星セインを統治、管理していた人型種に優先的に配備され、実質数合わせの戦力であり、またベアル人が設計、運用していたのでベアルファイターと言う名前がついたようだ。

  

 怜治達は自分達が産み出した機体について見直していた。

 

 バクファイガーも小学生時代の怜治が考えた独自の動力炉で動いている。


 それは万城のスカルガーやハジメのアストロシューター、レイカの社会現象になったロボットアニメ、エクスペリオンをモデルにしたロボットも同じだ。

 

 まずバクファイガーとスカルガーだがイメージがフワッとしていたのか動力炉も装甲素材もディーナ由来の物だった。しかし両者共に感情と共鳴すると言う共通点が存在している事が判明した。


 これはユーイチのファイアダイバーも同じである。


 ハジメのアストロシューターはゲーム通りでリアルな設定になっている。装甲素材は分からないがアーマーゲージ=ロボットのHPが自動回復製になっていたり、ブーストゲージ(光学兵器使用しても現象)も同じで動力も一種の永久機関になっていた。動力もディーナ由来ではなく、一種の核融合炉になっていた。

 

 問題なのはレイカのロボットアニメ「エクスペリオン」をモデルにしたロボットである。

 彼女自身はふんわりとしかエクスペリオンの事を覚えてなかったせいで、エクスペリオンを可能な限り再現したロボットと言う感じである。

 バリアの強度も意志の強さに反映されて固くなるらしい。 


 ユーイチは新たにロボットの製造をしようと思ったが彼自身やる事が多過ぎて手が回らないので実質後回しになっていた。



 怜治達はシュミレーターで操縦訓練を行う。


『いいのか俺で? コテンパンにやられても知らないぞ?』


「構わない。本気でやってくれ」


 バクファイガーのコクピットにはスカルガーが映し出されていた。

 ステージは地球近辺の宇宙空間である。

 宇宙空間独特の感覚を掴む意味でもマスターしなければならなかった

 この後はエリカとの戦いも控えている。


 ようするに三人での総当たり戦を行おうと言う考えだった。


 両者の機体が激しくぶつかり合う。



 ハジメはリミルに許可を取ってディーナでアームド・セイバーの製造を行おうとしていた。

 アストロ・シューターは何処まで行っても戦車型であり、次の戦場である宇宙では不利だ。


 そのための新造である。


 それに次の戦いは確かに山場であるがこれからも厳しい戦いは続くであろう。

 なのでこれから先の戦いを生き抜くためにも新たなアームド・セイバー産み出し、それも万一ディーナが使用不可能になっても製造出来るアームド・セイバーを作り出す必要があった。


 そこまで考え、リミルに伝え、熱意が伝わったのかリミルも製造許可を出した。


 そうして産み出されたのは突起物が無いシンプルな形状のツイン・アイのアームド・セイバーだった。

 白と黒のパンダカラー。

 武器もペガスで生産できるアームド・セイバーにも流用可能である。


 アームド・セイバーの特徴は空中浮遊能力、機体全体に張り巡らされたシールドによる防御能力。そしてビーム兵器を標準装備、運用可能な性能にある。 

 それを引き継いだ上での性能の底上げ、汎用性の強化を行った。

 

 名前はノヴァ。英語で新星を意味する言葉だ。

 


 続いて敵に関する情報共有も行われた。

 これは自衛隊にも通達されている。

 

 先ず改めて敵の主力兵器である人型機同兵器、アームド・セイバージェム。

 赤い一つ目の機体でビーム兵器を標準装備してバリアを持ち、空中を自由自在に飛び回る。

 

 バリエーション機の存在も確認されている。


 続いて駆逐艦級。

 

 正式名称ブント級。

 二回目の戦いでも多数出現した。

 主に主力艦艇の護衛や攻撃に特化した艦艇である。

 サイズは200m級。


 続いて戦艦級。

 正式名称ゲブリュ級。

 二回目の戦いで敵旗艦と一緒に出現したアームド・セイバー搭載艦である。

 ある程度の戦闘をこなせる上に二つのカタパルトデッキを持ち、その間に船体がある。

 サイズは300m級

  

 そして敵の艦隊を形成する上で旗艦となっているストレーグ級。

 サイズは600m級でペガスの半分以上の大きさを誇り、戦艦としての能力だけで無くカタパルトデッキを多数持つ大戦艦である。

 敵の主立った主力旗艦はこのサイズだ。

 

 共通してセインは皆白などがシンボルカラーに対して敵艦は皆赤黒いカラーをしており、ドーマのシンボルカラーらしい。

 ちなみにエリートは黒いカラーをしているそうだ。

 

 つまり黒のストレーグ級に現時点での敵の総大将「ケントニス」と言うドーマ人が乗っているそうであり、地球陣営にとっては最優先目標である。


 他にも重要なのは補給艦であるマーシュル級。

 工作艦のシュベヒト級。

 兵器開発工房を持つ超大型のアーバトス級(ペガス以上のサイズ)なる物も存在しているらしい。


 驚いた事にドーマ人は戦闘機や戦車などの他の兵科をほぼアームド・セイバーで補っているようだ。

 この辺りの事情はドーマ人の調査待ちである。  


☆  


 戦闘準備は進んでいき、夜になった。

 星空が眺める、空港の飛行機搭乗口周辺みたいに景色が綺麗に見える場所で怜治とリミルがいた。


 リミルは現在艦長職であり、今は休憩中でどう言う訳か怜治に会いたいらしかった。

 怜治も万城やレイカとのシュミレーターで疲れが溜まっていたので気分転換がてら呼び出しに応じた。


「敵から最後通達がありました。明日中が限界でしょう」


「明日中か・・・・・・早いな」


「既に敵の攻撃態勢は整っております。その気になれば今すぐにでも地球中の各地域国家に攻撃を開始する事も可能でしょう」


「今更だけど約束守るつもりは無いんだよな・・・・・・相手は・・・・・・」


 相手は日本政府と取引してペガス差し出すように言って来た。

 だが相手は目的達成する為ならそのついでに人を殺して回る連中である。

 ペガスを手に入れたら平然と東京を攻撃するだろう。

 よしんば交渉できても強大な武力をちらつかせて不平等な条約を結ばされるのは目に見えている。

  

「私達はほぼディーナに導かれるままにこの星に来てしまいました。例えどんな理由があれ、我々の問題に巻き込んだことは間違いだったと思っています」


「もう、そう言う話はよさないか? もう誰が悪いとかそう言う話はさ・・・・・・」


 今の神月町の人々がそうだ。

 小難しい理屈を抜きにしてただただ虚しかった。

 

「なあ・・・・・・リミル」


「何ですか?」 


「まだ都市部への空きスペースあるか?」


 突然の申し出にリミルは困惑した。


「ええ、ありますけど・・・・・・どうしたんですか?」


「いや、神月高校に避難民が大勢居てさ。居住者募ろうかと思って」


「でもこの船、ドーマ人に狙われますよ?」


「よくよく考えたら、戦っちまえばもう地球人類全てが狙われるようになるさ。ユーイチも同じくそう言うだろうと思うぜ」


「た、確かにそれもそうですが」


「それとさ、この艦を一種の大使館扱いして亡命政府って奴を樹立してみるのはどうだ?」


「ふ、船を大使館代わりにするんですか?」


「ユーイチが頑張ってるからな。ちょっと自分なりに色々と相談して考えたのさ。それよりもどうして俺を呼んだんだ?」


 彼女は困った様に頬を朱に染めて顔を逸らした。


「・・・・・・本当は怜治さん達を含めて地球の人達にはこの艦から立ち去って欲しいと思ってました」


「残念だけどもう無理な相談だ。あんまりにも関わり過ぎたからな」


「そうですよね。でも、そう言ってくれる怜治さんが嬉しくも思うんです」


「嬉しい?」


「故郷を捨てて、絶望を押し殺して希望を求めて宇宙に我々は飛び出しました。そして私はこの青き星で、この町に辿り着いて、貴方達に出会って希望を再び持つ事が出来ました」

 

 涙を押し殺しながら彼女はこう言った。


「本当に、ありがとうございます」


 と。

 

 怜治は頬に涙を伝わせながら窓を見る。

 星々は見えないが大きな窓越しに夜空が見えた。


「礼に言うにはまだ早いぜ。その調子だと、次に起きるとびっきりの奇跡に泣いちまうかも知れないぜ?」


 と言ってのけた。

 若干涙声で何度も何度も濡れた顔を服で拭って色々と台無しだ。

 だがそれが自分でもおかしく思った。

 リミルも何故だか釣られるように笑って「ハイ!」と答えてしまう。


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