第8話「鋼の救世主達」
リミルは学校で防衛戦を余儀なくされていた。
とにかく敵の数が多い。
前回の戦いと違って寮機も奮戦しているが何時まで持つか――
「ごめん皆――巻き込んでしまって」
『ここまで自分達を守ってくれたんですからそんなこと言いっこなしですよ』
『地球の子供だって頑張ってるんです! それに元々これは俺達の星の問題なんです!』
『そう言うことなのダ!』
『リミルだけに重荷を背負わせるわけには行かないダ!』
「皆――」
この支えに泣きそうになる。
だが今は戦いの場、泣くのは後だ。
『愛されてんのな――リミル』
『ユーイチさんもありがとう』
『礼にはまだ早いぜ――っと、もう一機撃墜!』
ユーイチは街から離れながらな出来る限り派手に敵を引き付けている。
機体の性能もあるだろうが、とても同い年とは思えない程の勇気と行動力だ。
此方も負けてられない。
『すまない! そっちに敵の部隊が向かった! 数二十!』
「此方に狙いを定めて来ましたか!!」
怜治からの報告を聞いてコクピット内で覚悟を決める。
二人とも無関係な自分達のために多くの敵と戦ってくれている。
ならば此方も頑張らなければならない。
敵の大部隊を迎え撃つために打って出る。
多数の砲火が行き交いながらも懸命に守る。
二人が守ろうとしている人々を守るために。
『怜治君! ユーイチ君! まだ生きてる!?』
まだ幼さが抜けない子供の声が聞こえた。
『その声、ハジメか!?』
『俺もいるぞ』
『はあ、私ってほんとバカ・・・・・・』
(地上に反応!?)
リミルには移植に見えるカラーのロボットが現れた。
全高は低い。10メートルあるかどうかぐらいだ。
右手に短銃身の銃、浮遊誘導兵器搭載した胴体、右肩の大砲、左肩の丸っこい機銃。肩にはブースターが搭載されている。そしてリミルには理解しがたかったが下半身は戦車だった。惑星セインではもう博物館でしかお目に掛かれない様な機構である。
頭もT字のセンサーで独特な形状をしている。
白を中心としたオレンジと黒のトリコロールカラー。
何処となくアームド・セイバーに近い雰囲気を持っている。
『ハジメ・・・・・・それゲームで使ってた奴の再現だろ?』
ユーイチはこのマシンの事を知っているようだ。
『うん、アストロ・シューターだよ』
「その、大丈夫なんですか!? 見るからにその・・・・・・」
『古臭いとか言いたいんだろ? まあゲーム通りに仕上がってるなら大丈夫だろ。ハジメ、見せてやれ』
『うん!!』
そしてハジメは地上を駆けだし、時折ピョンピョンと奇妙な機動をしながら敵を困惑させる。
『新手の機体か!?』
『何だあの奇妙な機体は!?』
『まるで虫みたいに跳ね回りやがって――』
攻撃を加えるが掠りもしない。
「アレは――」
『一種の回避機動でゲーム中ではFCS(火器管制システム)のオートロック機能の穴を付いた対人戦闘様の機動だ。結果は見ての通り有効らしいな』
そんなテクニックがあるのかとリミルは内心驚愕した。
初めて見る機動にドーマ人達は困惑していた。
『攻撃が当たらないぞ!』
『そんな鈍重そうな外見で何故アレだけ軽快に動ける!?』
『馬鹿な馬鹿な!』
猛烈な攻撃を加えるがそれでも当たらなかった。
元々の背丈の小ささや軽快に飛び回る地上目標へ馴れてない事もあり、ドーマ側は碌に狙いが付けられなかったのだ。
肩のブースタで急旋回して敵を手に持った銃口に捕らえる。
『仕掛けて来たのは君達なんだから――恨まないでね』
『ヒッ!?』
実弾――手に持ったマシンガンの銃弾が放たれた。
最初軽く撃って照準補正し、そして撃墜するまで弾を叩き込んでいく。
これでハジメも戦いの感覚を掴んだのか、胴体の頭部背後にあった自立浮遊機動兵器を作動。
頭上に展開してレーザーマシンガンをオートで敵に乱射。
左肩の丸っこい砲台、速射型パルスガンや右肩のレーザーキャノンを撃ちまくる。
しかもエネルギーを管理しながらだ。
「す、凄い・・・・・・幾ら永久機関でもレッドゾーンに突入してチャージモードになる筈なのに」
巨大移民船ペガスの創造マシンであり、動力であるディーナで作られた以上、バクファイガーもファイアダイバーも一種の永久機関で動いている。
しかしエネルギー供給量には限りがあり、大きなエネルギーを使えばそれだけチャージ時間を必要とする筈にも関わらずそんな様子を見せなかった。
『あの機体エネルギーの消耗率が低い設定値なんだよ。武器もエネルギー消費を考えながら使えば激しい動きをしつつ戦えるって言う寸法だ――』
「そんな概念が地球にはあるんですか」
『あくまでゲームの世界の話だがな――』
「は、はあ・・・・・・」
それでもリミルは感心してしまった。
また一機、二機と撃墜している。
それで左腕にはブレードの発生装置があり、迂闊に近付いた敵を斬り倒していた。
『ボサッとしている暇はありません! 敵の体勢が崩れました! これはチャンスですよ!』
『そうです! 我々も負けてられません!』
僚機にそう言われてリミルはハッとなった。
ハジメと呼ばれていた少年以外にも応援に駆け付けてくれた他の二機も応援に駆け付けてくれたようだ。
戦局は徐々にだが此方に傾いて来ている。
「そうですね! 我々も頑張りましょう!」
そう言って自らを、自分達を鼓舞する。
☆
「まさかお前まで戦いに参加するとはな」
『礼ならハジメに言ってくれ。アイツが男を見せたからこうして俺もここにいるんだ!』
「そうか・・・・・・」
空中で東 万城の機体と背中合わせになる。
まさか彼まで出て来るとは思わなかった。
ハジメと違い、怜治と同じくスーパーロボットタイプだ。
頭部を除いて全体的に丸っこく、フォルムも80年代のロボを今風にリデザインし直したかのような黒い風貌の二十五M級の巨大ロボットでバクファイガーよりも一回り大きい。これはバクファイガーと共に戦いたいと言う万城の意志を反映したからだ。
背中に生えた悪魔の様なフォルムのウイングパーツ。
手に持った身の桁サイズの巨大なダブルトマホーク。
白いドクロの胴体。
刺々しくも禍々しいツインアイの頭部。
ダークヒーロー然としている。
「名前は決まってるのか?」
『おう! スカルガーだ!』
「俺のバクファイガーと同じくらいのネーミングセンスだな」
『お前遠回しにバカにしてんのか? それよりも敵さんどうして仕掛けて来ないんだ?』
「お前に驚いてるからじゃねえのか?」
と、惚けて見せるが怜治には分からなかった。
実はと言うと突然現れたスカルガーやビーム兵器による同士討ちなどを恐れて攻撃の手が緩んでしまったのが主な原因である。
『んじゃあこっから反撃と行くか!!』
『ヒッ!?』
手短な敵に近付いて斧を振るう。
恐怖で金縛りにあったのか敵はそのまま真っ二つにされた。
『飛ばせ鉄拳だコラァ!』
『こいつも腕を!?』
更に左腕からロケットパンチを放つ。
驚きのあまり停止してそのまま真っ二つになる。
バクファイガーもそれに合わせるように反撃を開始していく。
『あーもうウチの男どもはどうしてこう・・・・・・』
早乙女 レイカも何だかんだでロボットを創って戦場に出ていた。
そもそもロボットアニメなんてあんまり詳しくない少女だった。
なので高層ビルよりも大きい40M級(ビルの7~8階建てぐらいの大きさ)の有機然としたフォルムの血のように赤黒い一本角の鬼の様な機体だ。両肩には縦長の兵器収納バインダーが付いている。モデルは社会現象にもなったロボットアニメの奴である。
確か「エクスベリオン」と言うタイトルだったか。
とにかく強力なバリアを張るのが特徴である。
両手には強力な火器を持っていた。
とんでもない威力のビーム兵器と実体弾を発射する奴だ。
通信を聞く皆自分の機体に名前を付けているらしいが自分も付けた方が良いのだろうかと思う。
それにしても敵がうっとおしい。
ハエ叩きの要領で取り合えず劇中のキャラがやったように六画形状のバリアを飛ばして叩き付ける。
エクスベリオンのエクスフィールドも再現されているようだった。
あのディーナと言う鉱物は一体何をどの様に応用してエクスベリオンを再現しているのか分からないがともかく何もしないわけには行かない。
皆、それぞれが出来る事をしている。
このまま暴れまくろう。
とにかく狙いはデカく戦艦狙いだ。
☆
神月町に降り立った艦隊旗艦、ストレーグ級「シュテルケ」。
アームド・セイバーの複数の発進デッキを持つだけの戦艦としての砲撃能力を持つ最新鋭の大型旗艦でもある。
その艦長である黒い軍服の艦長「エーゲル」は戦況に狼坊していた。
ペガスの機能――魔法としか思えない装置があると聞かされていたが、それで創られたと思われる敵の機動兵器の戦闘力は想像を超えている。
此方の損耗率は甚大である。
アームド・セイバーの数が減っていると言う事は此方にも敵の矛が向くと言う事である。
護衛の駆逐艦や巡洋艦も敵の新手の機動兵器により、航行不能、あるいは撃沈されていっている。
この旗艦にも攻撃の手が届き、次々と悲鳴と共に被害報告が出る。
「クソ!! 覚えておれよ! セイン人! 地球人! 撤退だ!! 撤退しろ!!」
怒りを隠さず、怒気を含みながら撤退命令をする。
☆
「敵が退いていく?」
怜治は呟く。
敵のアームド・セイバーの半分以上を撃墜し、手の空いたメンバーで艦隊に攻撃を続け、駆逐艦を全滅させて残すは旗艦と思われる巨大戦艦とその半分ぐらいのサイズの戦艦四隻だけだった。
他のアームド・セイバーも引き上げて行く。
『守りきったようだな――』
ユーイチはふぅと一息吐く。
その気持ちは分からなくもない。
日も落ちていた。
とにかく長い戦いだった。
『帰ったら、色々なところから怒られるのは覚悟しといた方がいいぞ』
「ああ、そうだな――」
ユーイチの言う通り。
たぶん様々な場所から怒られるだろう。
『だがそうしなけりゃ大勢の人間が死んでいた。それでいいじゃねーか』
と、万城が言ってバクファイガーの肩をスカルガーの手でポンポンと叩く。
だがそう言われても自分達は正しかったのだろうかと思い悩む。
『取り合えず暇なら手を貸してくれ。災害救助タイムって奴だ』
『それもそうだな――てか自衛隊マジで何やってんだ?』
ユーイチに言われて万城は疑問を抱くが取り合えず皆が皆疲れた体を引っ張って手を動かした。
とにかく敵を退ける事には成功したのだ。
それでよしとしようと怜治は気持ちを切り替えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます