第4話「自分達が置かれた状況」
神月高校から巨大移民船「ペガス」に乗り込んだ神月高校の生徒達。
より精確に言えば秋月 怜治の親友達はロボットの製作場でどうするか考えていた。
あのクマ型の異星人は災害救助のために一緒に安藤 ユーイチと出動してこの場にはいなかった。
秋月怜治に付いて来たのは安藤 ユーイチの他に黒髪前髪パッツンの髪の毛で清楚な淑女と言う雰囲気が漂う「早乙女 レイカ」。
小柄で子犬の様な少年、「犬宮 ハジメ」
などなど他にも沢山の人間がいた。
「大騒ぎになってるわね――」
「だってレイカちゃん――れっきとした戦争なんだよ?」
「そうね――」
21世紀、日本の戦後初の戦争。
それがまさか問答無用で侵略戦争を仕掛ける地球外生命体と来た。
困惑するのも無理はない。
スマフォで見れるネットのニュースもそんなのばかりだ。
ニュース映像では戦場さながらの非日常的な光景が映し出される。
とても日本の光景とは思えない。
「私、あんまり詳しくないんだけどこれから先どうなると思う?」
「えーと、えーと、こう言う時ユーイチ君が居てくれたら分かり易いんだけど、たぶん平和の為の話し合いをすると思う」
「平和のための話し合いですって!? 一方的にあそこまで攻撃されて、何人死んだかも分からないのよ!? 普通なら問答無用で戦争でしょ!?」
「だって日本だし・・・・・・」
レイカの言葉は荒いが、ある意味でこの場の人間の気持ちを代弁していた。
しかし威圧されてしまったのかハジメは頭を抱えてシュンとなる。
まるで怯えた子犬のようだ。
「あ、ごめん――」
『んじゃあ俺が語るか』
通信が聞こえた。
災害救助の為に出動した安藤 ユーイチの顔がモニターに映る。
「ちょっと、大丈夫なの!?」
皆を代表するようにレイカが尋ねた。
『その大丈夫の意味の適用範囲が広すぎてどう答えればいいのか迷うんだがな』
「ご、ごめん――ちょっと熱くなって」
『敵は退いて、住民の救出は出来る限りの事はしている。後は消防とか自衛隊とかの専門家にお任せってところだ。あと怜治も大丈夫だぞ』
「そ、そう――」
ユーイチは簡潔に応えた。
深呼吸してシートに背中を預ける。
『んでまあさっき、日本がどうするかって言う話しになったがハジメの言う通り先ずは話合いになるだろうな――気に食わんが・・・・・』
「それがどうしてか分からないんだけど? オタクじゃない私達にも分かり易いようにも説明してくれる?」
レイカが説明を求める。
『そうだな――相手の国が地球上の国だったら間違いなく戦争になる。だが相手は地球外からの侵略者だ。下手を打てば日本だけでなく周辺諸国も巻き込まれる。それに日本は未だに自衛隊を出動させたら自分の政治生命は終わりだと思っている政治家達が多いからな。まあマスコミや市民団体とか社会的に殺しに来るから強ち間違いでもないかな?』
「よーするに、恐くて戦えませんって事でしょ?」
『と言うよりも問題のスケールがデカ過ぎて日本だけじゃどう対応して良いのか分からないと言うのが正しいかな? 昭和のロボットアニメの世界じゃないんだ。突然地球外の侵略者に問答無用で侵略されるなんて想定外だろう』
「で? ユーイチ君はどう動くと思うんですか?」
ハジメが尋ねる。
『普通は国連で緊急会議を行ったりするもんだけど、相手は悠長に待つとは思えない。それにこの船の代表者のリミルさんに聞いたんだけど相手は艦隊規模で来てるから最悪今日中に再攻撃が来るだろうってさ』
「か、艦隊規模ですって!?」
「そんな数で来てるんですか!?」
艦隊と言われて二人は海を埋め尽くす軍艦の群れを想像してゾッとなる。
他の生徒達も似たりよったりだ。
『相手はドーマって言う惑星国家、いや恒星間国家らしいからな。アメリカが子供の軍隊に見える程の規模じゃないかな?』
「ちょっとハジメ、惑星国家とか恒星間国家ってどう言う意味?」
「惑星国家と言うのは惑星丸ごと統治している国家している国。そして他の惑星をも含めて統治しているのが恒星間国家だった筈です」
と、おそるおそるハジメは解説する。
「それどんだけの国力よ!? 勝ち目なんて無いじゃない!?」
レイカの驚愕は皆の気持ちを代弁していた。
子供でも分かる圧倒的な国力の差だ。
普通に考えれば勝てる筈がない。
『ハジメ君の言う通りだね。どう足掻いても勝ち目ないよ? 月に艦隊がいるけど、そいつらを倒しても援軍が送り込まれるだろうね。万単位の艦隊が一体幾つあるのやら? よしんば下手に追い詰めれば大量破壊兵器とか使ってくるかも知れないし』
「じゃあどうすればいいのよ?」
何かに縋るようにレイカは尋ねる。
『こう言うのは怜治の役回りだと思うんだけどな~ハッキリ言うぞ? 戦うか、大人しく従うかの二択しか無いと思うぞ』
「そんな――」
ユーイチの容赦ない、あんまりな言い方に項垂れるレイカ。
『ま、俺は突然やって来て無関係な街を焼き払う様な連中に従うのは嫌だけどね。それに君達が戦うわけじゃないんだし、面倒な事は自分達より頭がいいらしい政治家達に任せるのも一つの手だと思うよ。んじゃあ切るね』
そう言って通信を遮断した。
場がシーンと沈黙した。
皆顔が青い。
言葉の意味を理解して自分達が置かれた状況を理解したのだろう。
あんまりにも非現実的過ぎる。
まるでも何も世界の終わりを知らされたような状況だった。
その答えを誰も出せそうにもなかった。
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